OP連載

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石の動きは、ルフィ達を王宮から振り落としてなお続いている。
今現在シノ達のいる、王の台地であるはずの場所に肝心要の王宮は既に無い。
地面に持ち上げられるように遠くへ運ばれる王宮は、いつの間にか花畑の台地の上に聳え立っていた。
青空は島の端々へ延びる無粋な糸によって覆われ、電伝虫すら通じない絶海の孤島が出来上がる。
”奇声糸(パラサイト)”によって町中の人間が、かつてのリク王のように意思無き殺戮を繰り返し、悲鳴と怒号、銃声がひっきりなしに上がる。
赤く染まっていく町を、リク王が涙をためて見下ろしていた。


「……やめろ…ドフラミンゴ…!!!」


(これだけでも、リク王の無実を理解した人々は少なくない―――という事は、ドフラミンゴは国民を生かしておくつもりはないのかも…)


それ以前に、オモチャの秘密がバレた時点で皆殺しは決定しているのかもしれない。
ドフラミンゴの放送を聞きながら、シノは自分を支えてくれるヴィオラ越しにリク王へチラリと視線を向ける。
これなら、少なくとも国民がヴィオラとリク王を見かけても吊るし上げにはなるまい……と思って安心出来たのは、ほんの数秒の事だった。



『考えろ…おれの首を取りに来るか!!

 我々ドンキホーテファミリーと共におれに楯突く13名の愚か者達に裁きを与えるか
 
 選択を間違えばゲームは終わらねェ

 星1つにつき1億ベリー!!!

 こいつらこそが…!!ドレスローザの受刑者達だ!!!』



映像電伝虫の映し出していたドフラミンゴが、受刑者達のそれに切り替わる。
1ツ星として顔が出たメンバーは、レベッカ、ニコ・ロビン、錦えもん、ヴィオラ、フランキー。
そして2ツ星にキュロス、ゾロ。



『フッフッフッフ!!!各組織の”主犯格”は……もれなく”三ツ星”!!!』



『革命軍』参謀総長サボ
海賊『麦わらの一味』船長”麦わらのルフィ”
『ハートの海賊団』船長王下七武海(暫定)”死の外科医”トラファルガー・ロー
ドレスローザ元国王リク・ドルド3世


つまり、彼らを討ち取れば3億ベリー貰えるという事だ。
そこかしこから、金に目の眩んだ男達の雄たけびが聞こえる。


「……」


『ハートの海賊団』”音凪のシノ”


そう記された画面には、シノの顔がしっかりとローの隣に映し出されている。
前者4名はわかる。
たしかに各組織の親玉で”主犯格”に相応しいだろう。
だがシノは…?


「(私いつの間に主犯に……)」


あれだ。
昔、賞金額が2億になった時の嘆きに似ている。


「(そんなに悪い事………したかそういえば…)」


ドフラミンゴにとって、ではあるが。
あの切り札とも言えるマンシェリーを逃がしたのだ。
遠い感じになっていたシノの目が、ドフラミンゴざまあな方向で少し持ち直した。
やはりあいつは嫌いだ。
そして思う。


「……やっぱり…マンシェリーはリストに入ってないのね」

「「「!」」」

「ん?饅頭?」

「違ェよ。シャンメリーだろ」

「マンシェリーよ!!」


シノの呟きにハッとしたのはリク王家に連なる者達で、ピンとこなかったルフィとゾロのすっとぼけた回答に、ヴィオラが怒鳴る。


「小人族の姫で”チユチユの実”の能力者!!あなたにはさっきシノが逃がしたって教えたでしょ!!」

「おっおお!!そうだった!悪ィ」

「チユチユ?」

「ああ。傷の治癒もさることながら、彼女は寿命を削って行う復元能力がある……!」

「そりゃ…」

「ええ!トラファルガー達も工場内部を破壊出来たようだけれど、マンシェリーがドフラミンゴの手に落ちればそれも……」


シノは工場破壊の報せに安心したが、他の面々はマンシェリーの存在に眉を寄せたままだ。


「だからドフラミンゴはあえて私達を逃がしたんだね…」

「そうだろうな……我々が受刑者として国中から標的にされている内に、マンシェリーを再び捕らえるつもりだろう。ヴィオラ」

「ええ。彼女の場所はずっと見張っているわ……地下へ入って行ったけど…」

「!キャプテン達を探してるんだ!鳥達にはキャプテンか麦わらの一味の誰かと合流するようお願いしてあったから」
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