OP連載

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「《マンシェリーがいるな!!そうはさせん!!!》」


岩石巨人を睨み上げ、鬼哭を構えるローを嘲笑うかのように、すかさず石の波が起こり、地面から氷柱のように尖った石の矛が次々と湧き出る。


「《”舞踏石(チャールストン)”!!!》」

「効くかよ……今更…」


スパパパ!と切れていく石が切り株のように尖りをなくし、ローに辿り着く前に落ちては生える。
石の柱がローの周りを埋め尽くし、やがて大きな影がローの真上に現れる。
見上げるローの眼前で、石の顔が大口を開けていた。


「《”噛石(バイトストン)!!!》」

「”シャンブルズ”」


石が石を食らう。
ローが自分と入れ替えた石柱を噛まされたピーカの口から、砕かれた石クズがボロボロと落ちた。


「―――だから効かねェって言ってんのが……わかんねェのか?」

「《!!》」


地下を覆うように広がった”ROOM”の中で、切り裂かれた石の拳が宙を舞う。


「わかんねェんだろうなお前らには……”タクト”!!」

「《わかった風な口を………お前こそ…多少名を上げたところで、お前は所詮ドフィという王の前に跪く他ないというのが…―――まだわからねェのか!!?》」


自分に向かってくる石を跳ね除け、ピーカが切り裂かれていない方の拳をローに向かって叩きつける。
刀でそれを受けたローは、またひとつ、石の拳を斬った。
拳のない両腕をさらに振り上げては下ろし、斬っては斬られの繰り返しをしながら、ローは徐々に後退を余儀なくされていた。
巨人の腕を切り落としても、それがなくなるわけではないからだ。
斬って”死んだ”石を避け、”生きた”石へと斬撃を食らわすには、どうしても攻撃を避け続ける必要がある。
見方によっては、いくら斬っても蘇るピーカと、斬っても攻撃を受け続けるしかないローとでは、ピーカの方が優勢にすら見える。



「トラ男の奴大丈夫なのか!?相手は最高幹部だってェのに……防戦一方じゃねェか!!」


小人達に運ばれながら、ウソップは背後に迫る岩石巨人に気が気ではなかった。
戦闘中のローを置いて、戦闘のサボ達は既に地上のコロシアムへと足を踏み入れようとしていた。



「そんなナリで他人の心配たァ………余裕だな”ゴッド”」


「下だ!!!」


と叫んだサボの炎が地面すれすれを通り、ウソップは目と鼻の先の熱に、涙と鼻水と悲鳴を上げた。


「ぎゃーーーーっ!!!!焼かれるーーーっ!!!焼き殺されるーーーっ!!?」

「ウソップ!!」

「「「「うわあああっ!!!」」」」


ウソップとウソップを運ぶ小人達を横切った炎によって、一瞬彼らの足が止まる。
その隙を逃す男ではなかった。
舌打ちなのか、それともおしゃぶりを鳴らしただけなのか。
逃げる彼らの声に紛れたその音は、地面の奥から再びウソップ達に迫る。


「ぐげっ!!」

「地面から腕がっ!?くそっ」


ウソップの首に巻きついた腕を見咎めたフランキーが、腕に仕込まれたマシンガンが照準を合わせようとするが、当然、ウソップや小人達を巻き込むに決まっているそれが撃たれる事はなかった。
しかし、小人達の小さな槍が一斉にそれに襲い掛かる。


「ウソランドをはなせーー!!!」


すると、腕は大人しく地面に吸い込まれて消えた。


「「「「へっ?」」」」

「いけない!!”千紫万紅(ミル・フルール)”」

「ぎゃーーーっ!!!今度は串刺しーーーーっ!!!?」


飛び掛るいくつもの矛先がウソップに届く前に、ロビンの手が小人達を捕まえる。
首元2cmくらいで止まった刃を前に、ウソップは慎重に息をした。
鼓動と息切れで胸が上下するだけでも届きそうな矛先が降ろされ、ウソップは命の恩人に鼻を詰まらせながら礼を言った。


「あ゛っありがどロビン……っ!!死ぬどごだっだ…!!」

「ええ本当に!!無数に串刺しにされて首が落ちてしまうかとヒヤヒヤしたわ…!」

「!!」


そうだけど、確かにウソップもそう思ったけども。
ホッとした様子のロビンは、相変わらず自分の想像がウソップを恐れさせている事に気づいていないらしい。


「ロビランド〜〜!!」

「良かった!あと少しでウソランドを…!」

「てめェら油断すんな!!まだいるぞ!!」


地面に目を集中させていたフランキーは、腕の出現と消失の時と同じく波打った場所を見つけると、次こそ躊躇わずにマシンガンを撃つ。
それはロビンの後から出ようとしていた所で、弾が届く寸前にまた消えた。


「地面を行き来できる能力か何かか……!?」

「立ち止まるな!!敵が集まってくるだけだぞ!!」


多くは、ピーカとローの戦闘に巻き込まれているため来れずにいるが、賞金に目が眩んだ者達を完全に止められたわけではない。
その残り少数を蹴散らしていたハックは、先頭のサボから離れて自分と合流しつつあるウソップ達をそう言って急かしたが、決定的な攻撃を防げいている代わりに、歩みはとても遅くなっている。


「らちがあかねェ…!」


撃たれては引っ込みを繰り返す地中の男、セニョール・ピンクは元々オモチャの家の警備に回っていたおかげで、いち早く一味とローのいる場所へ駆けつけていた。
本来ならばこちらもファミリーを一旦集結させて体勢を立て直すところだろうが、マンシェリーが奪われたともなればそうも言ってはいられなかった。
幸い海軍大将は町の混乱を治める方に動いた。
オモチャの秘密は白日の下に晒され、”鳥カゴ”に覆われた現在、交易港の秘密もへったくれもない。


「(だが……革命軍の参謀もいる…ここは他の奴らが追いつくまで足止めするしかねェな…)チュパッ!」


地面を泳げるセニョールにとって道など無いに等しいが、他はそうではない。
幹部達が追いつくまでマンシェリーごとこいつらをここに留め、合流後に確実に捕獲し、その他は仕留める。
焦る必要はない。


「……おいロビン。ちょっくらこいつらを”飛ばして”おいてくんねェか?」

「!ええ」


フランキーの両腕が地面へと向けられ、ロビンの手が再び地面に咲いていく。
それらに掴まれた小人達、ウソップは宙へと放り投げられた。
すかさず、観客席から斜めに生えた大きな太い一本の腕が手のひらでそれを受け止める。
ロビン自身も咲かせた腕を足場に手のひらへ着地した瞬間、フランキーの両腕に光が集まる。



「”フランキーラディカルビーム”!!!」



自力で避けたサボ、慌てて避けたハック、小人達や敵まで、それを目撃した男性陣の目が各々差はあれど、興奮で光り輝いた。
女性陣との落差が相変わらず凄まじい男のロマンは、フランキーのいた場所を中心として、大きなクレーターを作っていた。


「「「「ロボーーーー!!!!」」」」

「「「「ビームーーーー!!!!」」」」

「おおっ!すっげェな!!!」

「…」


参謀のクールさをどこかにやってしまったサボ同様、言葉はなくともハックさえ、頬の血色を良くして釘付けである。
敵味方問わず、周囲の反応はおおよそ同じである。
この男を除いて…


瓦礫の欠片が落ちる音の先で、フランキーの目当てだった男の姿がついに明らかとなった。
間一髪で命中を避けた地中の男、セニョール・ピンクはおしゃぶり鳴らして腕を組み、あの格好で堂々たる仁王立ちを披露していた。


「おうおう!いい年こいてかくれんぼたァ………って変態じゃねェか!!?」

「「「「お前が言うんかい!!」」」」


ウソップと、敵その他大勢のツッコミがひとつとなった。
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