OP連載

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「(人が……知らない人が増えていく……)」


オモチャになっていたコロシアムの戦士達の中でも、金より恩を取った男達が続々とルフィの下に集まっているからだ。
しかも全員が全員、自分たちが恩返しにドフラミンゴを討つ気でいるときた。
人口密度の高さに震えを感じるシノ的には、とにかくよそで頑張って欲しい。


「いたぞ”三ツ星”に”二ツ星”の『受刑者』達だ!!」

「首を取れェ〜〜〜っ!!!」


「あいつら――共に地下にいたオモチャだった奴らじゃねェか……!?」

「よくもぬけぬけと…!!」

「くたばれ恩知らず共がァ!!!」


「ぎゃああああああ〜〜!!!」


結果的に助かっているのは否めないが。


「あれ?お前は!!」

「モ?」

「ウーシー!!おれだよ!!」

「モォ〜〜〜!!」


次にルフィが目にとめたのは、何と牛であった。
それならば―――


「よろしくね」

「モ!」


シノが歓迎しないはずはなかった。
戦いながらのルフィの肩より、遥かに良い乗り心地を提供してくれるウーシーに微笑むシノに、ゾロが「お前キャラ変わってんぞ」とジト目になっているが、これがシノの地(※本人談)である。


「私は知らない人が嫌いなだけで、人間じゃなければ大体好き…」


だから乗らないでね、と言わんばかりに見知らぬ戦士2人をシッシと追い払おうとするシノだが、敵もさるものである。
無視して乗ってきた。


「そんなァ〜〜固い事言わないでくれよお嬢ちゃん」

「行けェ!!ウーシ〜〜!!!」

「ンモ゛ォ〜〜〜〜ッ!!!」

「そうだァ行け行け牛〜〜〜っ!!!」


さすがはコロシアムで戦っていた牛だけはある。
ルフィ達を乗せ、王の台地を駆け上がる姿は駿馬さながらである。
ルフィはウーシーを応援しながら、ふと入った後の声に振り返った。
ゾロとシノはいい。
問題はそれ以外の2人である。


「おい!!行け行けじゃねェよお前ら!!」


そうそう、とシノが頷く。


「はい?」

「降りろよウーシーが重いだろ!!」

「(こくこく!)」

「――はい申し遅れました。おれはジェットそして後ろにいる大きい方が?」

「アブドーラです」

「「聞いてねェよ!!」」



********



コロシアムの地下で行われていた戦いは、徐々に戦場を移動していた。
ローの能力で未だに一撃もまともに攻撃が決まらず、ピーカの苛立ちは高まっている。
”ROOM”によって切り捨てられる石を、移動しながら地中の岩石から補給しつつ、石の豊富な地上にローを追い込む気だ。


「(それだけじゃねェ……一瞬でも隙を見せようもんなら、一撃で”ROOM”の外に弾き飛ばすつもりでいやがる)」


加えて、広範囲に張り続けている”ROOM”による体力の枯渇も狙っている。


「(舐めやがって…!)」


岩石巨人を作り、動かし続けている己の限界が、ローのそれと比べるまでもないとしているのがよくわかる。
このままいけば、ローは直にピーカの思惑通り地上に追い込まれるわけだが、


「《ピッキャララララ!!おいロー!!》」

「ァあ?」


攻撃の手を休めぬまま、ピーカの声が一段と高く響く。
ひどく、耳障りだ。
ローは不快だと隠そうともせず石を切り離し続け、ピーカは余裕からか甲高い声を広く響かせる。


「《マンシェリー達を逃がしたつもりだろうが、お前にもわかっているはずだ!お前がこうしている間に、ファミリーの幹部たちが続々とマンシェリーを狙い集結している!!お前たちはもう終わりだ!!!》」


石の触手がうねりを帯びて、避け続けるローを追尾し、斬られる。
斬った後の第二陣がすぐに飛び出し、それを避け、地上へと誘導していく。


「《だがお前は殺さずドフィの下へ連れて行ってやる!!お前はドフィのために死ね!!その能力で償え!!そうすれば麦わらの一味も、あの小娘も!苦しませずに殺してやるぞ!!!》」

「ハッ!馬鹿笑いして何を言うかと思えば…」


ローの避けた石の触手が、地上への穴を開けた。
ついに地上の光がローの背を照らし出す。
彼の背負う”ハート”は、ずっと彼の人の為だけのものだ。


「その小娘ってェのは、てめェがドフラミンゴに手伝ってもらって捕らえたうちの管制官の事か?」

「《何をォ…!》」

「思い上がりもそこまでいくと笑えるな―――追い込まれたのはどっちか」

「《!?》」


巨人の顔から、本体のそれと同じく表情が無くなった。
その頭上で太陽の光を背負うローは、笑みを深くする。


「そうだピーカ!てめェがあてにしていた地上の石はここにはもう無ェ!!」

「《馬鹿な!?そんな…》」

「てめェがおれに無駄な攻撃を仕掛けている間、おれはてめェが視認出来ない程の”ROOM”を張り続けていたんだ。コロシアムから遠ざけられたのはてめェの方だピーカ!!!」

「《!!》」


石造りのコロシアム。
中には海楼石さえ使われているそれを全て”シャンブルズ”するのは、質量的にも海の力からも不可能に近かった。
だからこそ、あえて追い詰められコロシアムから遠ざかり、いずれ石を補給しようとするピーカに付き合いながら、少しずつ彼の保有する岩石を”ROOM”の外へ出していったのだ。
地上の石畳や家々は、この付近からは既に無い。
地中の岩石も、ローを追う道すがらほぼ取り尽していた。

巨人の目が色をなくす。
石の中から、黒い覇気を纏った本体が抜け出し、鬼哭を上回る長さの刀身が振り下ろされる。



「それしかねェもんな」

「《調子づいていられるのもここまでだクソガキィ!!!》」

「だからそりゃ……――どっちの話だ?」


太刀筋ではなく、黒い太刀で斬った大きな身体から、赤い飛沫が上がる。
いち早く黒が抜けたのは、飛沫を上げたピーカの方だった。


「「「「ピーカ様ーーーーっ!!!!」」」」


地上に出た途端に、再び地下へと落ちていく最高幹部の姿を目撃した構成員達が堪らず叫んだ。
落下していくピーカとは違い、地上に着地したローに目をつけられまいと、叫んだ彼らはすぐさま距離を取ろうと逃げていく。
雑魚に興味はないが、逃げる足音を耳にしたローに、ふとある考えが浮かんだ。
この付近の土からはピーカのせいで石がほとんどなくなり、土が軟らかくなっていた。
大穴の淵から、土がボロボロと崩れ、地下へ風に流されて落ちていく。



「虫けらの気分を味わうにはちょうどいいか―――”シャンブルズ”」


ローの手が動き、地下のピーカと砂の中との”ハート”を入れ替えた。
砂と一緒に地下へ落ちていく驚きで、たくさんの足を動かして慌てていた虫の動きが止まり、代わりにピーカが地下で妙な呻きを上げたが、所詮は虫の息。
地上のローの耳に届く事はなかった。



「借りは返した……あいつの分までな」



********

ピーカ様、ギ○ュー隊長の刑。
戦闘シーンむずい。
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