OP連載

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「ピーカが討たれた……!!トラファルガー・ローが勝ったわ!!!」

「なんと…!!」

「お父様!私麦わら達の所へ行くわ。この鍵を届けないと」


王の台地で戦況を見守っていたヴィオラは、拾った鍵を摘んでリク王へ告げる。
しかし、リク王の表情は険しい。
大半の国民達の誤解は解けているだろうが、自分も含めヴィオラもドフラミンゴの定めた受刑者の1人である。
この混乱と恐怖と絶望の中、国民達がおいそれと娘が直走る事を許すとは思えなかった。


「危険を承知で言うか」

「ええ!勿論」

「何故だ?あいつらが何だと言うんだ?海賊だぞ!」


あの僅かなやり取りの間で、ヴィオラが海賊達と多少なりとも行動を共にしていた事はリク王とて理解していたが、それでも相手はドフラミンゴと同じ海賊だ。
娘が己の身を賭けてまで、そうするに足る価値な何なのか。



「お父様私…彼らに賭けたの!!
 『世界政府』が称号を与えこの国に君臨した”海賊”ドフラミンゴに私達はこれだけの傷を負わされたのに、今更『正義』をかかげた海軍や政府なんかに助けて欲しくない!!!
 
 彼らには聞こえないのよ
 自ら出した犠牲者の声が…この国の怒りの声が……!!!
 権力者の耳は都合よくできているから……!!!
 
 少なくとも”麦わら”達の言葉には血が通い!!!彼らの行動は心と共にある!!!」


「…………………」


リク王の脳裏に、ほんの少し前の”海賊”の言葉が蘇る。


『おれが必ずドフラミンゴブッ飛ばしてやるから!!!おれの仲間のそば離れんな!!!』


電伝虫に向かい、己が血を分けた孫、レベッカの身を案じる”麦わら”の言葉が嘘か誠かわからぬ程、耄碌したつもりはない。
ヴィオラが心を寄せる理由は理解した。
「だが」それでも、と今一歩踏みとどまらせようとする父の言葉を、ヴィオラは遮った。


「それにねお父様……私…”友達”を助けたいの。きっと困っているはずだから」

「”友達”…?」

「ええ!シノが私を助けてくれたように…私も……!!!」


手のひらの鍵に視線を落とす。
あの枷がまた彼女を苦しめている限り、助けきれたとは言えない。

鍵を握り締め、再び強く見上げる娘を止める術など、リク王にはなかった。
瞳を閉じ、空を仰ぐ。
瞼の裏で、もう1人の娘の笑顔が浮かんだ。



「――――まったく……お前達ときたら………」


誠、愛と情熱の国に相応しい


「……困った娘達だ」



********



舞台が無くなったコロシアムは、今や観客席を舞台と変え戦士達の戦場となってしまっていた。


「チィッ!!埒があかねェ…!おいコアラ!この場は任せていいか!?」

「無茶言わないで!!っていないーーーっ!!?」


一言も許可してないにも関わらず、マッハバイスを丸こげにした直後、サボは忽然と姿を消した。
コアラは鬼のように目を吊り上げ「くぬーーーっ!!!!」と奇声をあげて、次々と現れる金目当ての猛者達を薙ぎ倒す。
ハックは火の粉を被らぬよう、余計な刺激を与えぬよう素知らぬ顔で戦っている。
怒りの鉄拳の熱が冷ない事には、他の仕事も出来ないだろう。
何をしに行ったのかは定かではないが、サボがいなくなるのは必要だからだ。


(…コアラの気持ちも、わからぬでもないが)


今は目の前の敵に集中するしかない。
マンシェリーという小さく大きな餌のおかげか、現在のコロシアムは鳥カゴの中でも随一の激戦区となっていた。
ローがピーカを引きつけてくれたおかげもあり、街中の混乱のせいで気づいている者はそう多くはない。
そこもドフラミンゴの狙い通りだろう。
今しがたサボの倒したマッハバイスを含め、セニョール・ピンクを皮切りに幹部連中が続々とコロシアムに集まっている。



「キャー!ホントにいたー小人共!!」

「!あれは」

「幹部デリンジャーれす!」


オモチャの家から駆けつけたデリンジャーは、通路を抜けて広がったドーム上の観客席一帯に広がる戦況を見渡し、小人達とウソップ、ロビン、レベッカが一足先にコロシアムを抜け出ようとしているのを見つけた。
きゃぴきゃぴと、まるで年頃の少女のように姦しい独り言は目立ち、小人達もすぐに警戒態勢をとる。
フランキーはセニョール、コアラとハックは殿で敵を食い止めており、先頭を走っていたロビンは仕方なく歩みを止めた。


「ここは私が!行って!!」

「ロビンさん!!」

「レベッカ!みんなはマンシェリーを守って先に!早く!!!」

「ロビランド!!!」


ロビンは手を交差させると、コロシアムと王の台地の接触部分に腕を咲かせ、ネット上の梯子を作り上げた。
レオは抱えたままだったマンシェリーの方を向いた。
何かを決めたような、決意の見える男の目だ。
愛しい人のそんな顔に、マンシェリーがもじもじしていたら、レオは「カブさん!!」と仲間に声を張り上げる。


「レ…レオ…?」

「姫!!」

「なっなぁに…?」


ドキドキ、と鼓動を早くする胸を誤魔化すように、マンシェリーがレオから僅かに身を離した瞬間、


「姫は先に!!カブさん姫を頼むれす!!!」

「きゃああああっ!!!!」


投げた。
愛しい人は、あろうことかマンシェリーを近づいてきた仲間に投げた!
逞しいカブの腕に受け止められたマンシェリーが放心している間に、レオはロビンと共に客席に立つ。
デリンジャーと対峙する。


「レオ!あなたも」

「いいえ!!2人で倒しましょう。ロビランドに万一があれば皆も逃げられなくなります!!!」


腰に挿した針を抜き、ロビンの前に出たレオ。
身体は小さくとも、頼もしさはそこらの大人間達より余程である。
ロビンはフ、と男の背中に頬を緩めた。


「頼もしいわね」

「これでもトンタッタの兵長れすから!!」

「何か勝手に盛り上がられてる?超面倒〜〜〜!!――ま、関係ないけどォ」


飛び出したレオと、襲い掛かる巨大な腕を前に舌なめずりしたデリンジャーは、帽子のつばの下で瞳の色を赤く変えた。
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