OP連載

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「――おい麦わら屋!!ドフラミンゴを討つ気でいるんなら……わかっているんだろうな?」

「ん?」


いかにも暢気に返事をするルフィを、ローの険しい視線が突き刺す。


「こうなってしまった以上……この国にいる者達全て皆殺しにするまで鳥カゴは消えはしないだろう」

「だろうな」

「「ええ〜〜!!?」」

「おれ達が生きてこの国を出るにはドフラミンゴを討つ他ない…!
 だが今奴を討てば『SMILE』を失うカイドウの怒りは全ておれ達に向けられる」

「……」


ルフィは表情を動かさず、黙ってローの言葉を聞いていた。
シノもだ。
ただ、彼とは少し違う意味で、口も、表情も何一つ動かさず、じっとローの顔を見上げる。


「怒れる『四皇』と直接戦う事になるんだぞ!!!」

「そんな先の話後でいい」


今おれが止まってどうすんだ!!!
そう断固として言い切ったルフィ。
彼も一船の船長なのだと、シノに思わせたその姿に、ローも何かを感じ取ったようだ。


「ふふ」


シノは自然と笑っていた。
何故笑う、と訝しげに見下ろすローの目はともかくとして、他はやっぱり落ち着かない。


「よかったねキャプテン
 ……ルフィ君もとっくに腹を括ってたみたいで」


「も?」と首を傾げるルフィより先に、察しのいいゾロが口角を上げる。


「何だトラ男。てめェも端からそのつもりだったんじゃねェか」

「何だそうなのか!」

「シノ……」

「キュッキュキュキ!(まったく面倒くさい男ですな!)」


恨めしげだったローの標的が、一瞬にしてシノからスータに切り替わる。


ぐわし!


「ギュッ!?」

「スータ!キャプテン…!!」

「コウモリの解剖は久しぶりだ…」

「キュオオッ!!!??」


鷲掴みにされた黒い棒が死ぬ気でグニョグニョと抵抗する様は、哀れと恐怖を誘う。
それを指差して笑っているルフィを見た、ジェットとアブドーラが目を向き、やっぱ七武海コワイ…!!と顔を青くした。

恐ろしいタトゥーの刻まれた腕から、無事に小さい手に救われた蝙蝠はというと、ガクブルしながらシノにひしっとしがみついていた。
その背を、よしよし、とシノが撫でる。


「キュイ…キュイィ〜〜〜(姫様…恐ろしゅうございますあれは鬼でございます〜〜〜)」


何故かこの蝙蝠、シノが余計な事を考えている時と通じる腹立たしさをローに感じさせるのだ。
咎めるように見上げるシノに、ローは一言「お前のせいだ」と断言した。
おかげでシノの顔が引きつるも、ローはお構いなしである。


「それより錠を外す算段はついているのか?」

「おう!!鍵を持った仲間と『ひまわり畑』で落ち合うんだ!!」


シノが頷くのと同時に、ルフィが誇らしげに言う。
鍵を見つけたのはヴィオラだが、ロビンやレベッカといった仲間、友達が持ってきてくれる。
それを心の底から喜び、信頼しているのだ。
自信を持った答えに、ローは「そうか」と頷いた。



その頃、旧王の台地では―――


「ウソでしょ!!?」

「ホントれす!!!」

「「カブト虫で人が飛べるわけないよ(でしょう)!!」」

「町を走って行きましょう!!」


トンタッタエアライン、イエローカブ達に繋がった紐を両手に、レベッカとヴィオラ、ロビンは小人のメルヘンな提案を鵜呑みにはしていなかった。
カブトムシに紐つけて飛べなんて、紐なしバンジーと何が違うというのか。


「――じゃあ説明するれすよ!!
 これは『TAL(トンタッタエアライン)ジャンピングサービス』!!大人間は重いので飛ぶ事はできません!!」

「「「(やっぱり…!!)」」」

「時間もない事ですし!!とりあえず飛んでくださーーい!!」


それ説明になってない!と誰かがツッコミを入れる前に、レオ達は大人間3人をいとも容易く台地から突き落とした。


「キャーッ!!」

「レオ!!?」


思わず目を瞑ってしまったレベッカは、すぐに目だけでなく口も大きく開けた。


「わあ!!」


重力の落下というには、あまりにふわりとしている。
それは、まるでいつか見た夢の中で空を飛んだ時のような、不思議な感覚だった。
落下の寸前、レベッカに飛び乗っていたレオが、肩に手を付き、バランスを整える。


「飛べませんが!!落下を減速し!!うまく屋根に乗ってください!!
 屋根を蹴れば……!!上昇を助けます!!!」


指示通り屋根を蹴ると、普段自分のするジャンプが嘘のように大空を飛び上がる。
空をスキップしているみたいだった。


「うわーっ!!!」

「下からの攻撃にも注意して各自4段目ひまわり畑を目指すのれす!!!」

「「「了解!!」」」


次の大きな一歩を踏み出した直後だった。



「下からだけで……いいのかねェ?」



上からの刺客が嘲笑を浮かべた。
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