OP連載

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「よォ〜うレベッカ!!また会ったなァ」

「ディアマンテ!?」


レベッカ達より上空に漂う赤がヒラヒラと降下してくる。
空中で体勢を変えられないレベッカ達とは違い、ディアマンテは上手く身体を操り風に乗り、時には一反木綿のように、時には肉体の一部の重量を戻し、軌道を変えてレベッカ達に接近する。
ディアマンテの腕が形を成し、剣を振りかぶる。


「”十輪咲き(ディエスフルール)”!!」

「ぐぬっ!!」

「っロビンさん!」


レベッカに振り下ろされるはずだった腕を止めたロビンだったが、それを悟ったディアマンテも瞬時に腕を戻し、ヒラリと抜ける。
腕を抜け出た所で、攻撃のモーションをロビンへ向ける。


「ニコ・ロビンか……小癪な!!」


ディアマンテの剣は、その剣圧だけでも敵を斬る。
ロビンとイエローカブを繋いでいる紐が斬られ、落下していくロビンを見届けたディアマンテは、次の矛先を再びレベッカへと変える。


「死ねェレベッカ!!!」

「ああっ!!」

「レベッカ!!」

「させない!!”四本樹(クロトワ・マーノ)グラップ”」


ディアマンテの身体から大きな腕が4本出現し、四方からディアマンテを掴んだ。
すり抜けようにも、己の身体から生えている腕は振り切れる事はなく、ひとつを避けようとすればたちまち他の腕に捕まる。
ひとつの腕に捕まれば、あとは他の腕が次々とディアマンテの身体を掴んで握って放さない。
握り締められた一反木綿は、腕の捻りで雑巾のように絞られる。


「ウゲェーーーッ!!!!」


絡みついた腕とともに落下していくディアマンテに安堵しながらも、ロビンを気に掛けるレベッカとヴィオラに、ロビンは「行って!!」と強く叫んだ。
我慢ならないのはディアマンテである。
覇気をともなわない攻撃であるからして、大したダメージはない。
ただ、いくらすり抜けようともまた捕まってはイタチゴッコも甚だしい。
ディアマンテは完全にすり抜けるのを諦め、瞬時に思考を切り替えると、最も近くにいた獲物に向かって剣を突き上げた。


「”蛇の剣(ウィーペラグレイブ)”!!」


能力でヒラヒラになった剣が、蛇のようにうねり、伸びてレベッカの背中に突き刺さる。
気づいたレオが剣を弾いた時には遅く、レベッカのマントは赤黒く染まっていた。


「レベッカ様!!」

「レベッカーーー!!!!」

「”スパンク”!!!」

「グエッ」


背中を刺された事で、レベッカの全身から力が抜ける。
次の屋根を無事に蹴り上げられたとしても、出血によっては辿り着けるかどうか。
緩やかにスピードを失っていくレベッカから少しでも引き離すため、ロビンは自分の腕ごとディアマンテを叩いて弾き飛ばした。


「ヴィオラ!!!レベッカは私にまかせて!!『ひまわり畑』へ!!!!」

「…っわかったわ!!!レベッカをお願い!!」


市街地に落ちていくロビンの背に翼が現れ、手近な屋根へと着地する。
ロビンはレベッカの元へ走った。
一方ディアマンテは、彼女達とはだいぶ離れた市街地へと叩きつけられていた。
石畳に当たる寸前に咲いていた腕は消え、ヒラヒラの実の能力でダメージはない。


「畜生ニコ・ロビン…!」


瓦礫にまみれた市街地から、また風に乗って空へ上がる。


「しかしドフィの命がある…探してブチ殺してる暇はねェか」


この混乱の中では、同じく市街地に落ちたであろう女2人を再び見つけ出すのはさぞ骨が折れるだろう。
命拾いしやがったなと腹の内で毒づいて、ディアマンテは当初の目的地を目指して再び飛んでいった。



「レベッカ!!レベッカ大丈夫!?」

「ロビン…さん……」

「ロビランド!!幸い傷は浅いようれす……ですが……」

「ごめんなさいレベッカ!私がついてて…!!」


何とか屋上のような場所まで辿り着いたレベッカを、レオが止血していた。
ロビンはレベッカが居た方向へと目を咲かせ、何とか彼女達と合流を果たしたが、彼女に傷を負わせてしまった事にひどく心を痛めていた。


「謝るのは、私の方……ごめんなさい。私…足手纏いで……」

「そんな事…!」

「ひとまずこれで傷は縫合出来ました!!とはいえ完全にくっついたわけじゃないので無理はしないでくださいね」

「ありがとう…」


レオの能力で傷を塞ぎ、一言断ったロビンはレベッカのマントの端を切り、傷の周りを覆った。


「このままここにいても危ないわ……」

「ロビランドといたイエローカブ達とははぐれてしまいましたし、どうしますか?」

「そうね……でもディアマンテがいる限り空の移動は止めておいた方がいいかもしれないわ。どこかへ向かっていたようだから、追撃はないかもしれないけど…見つかればわからない」

「そうれすね」


どちらか1人ならイエローカブでヴィオラを追いかけられるかもしれないが、どちらにしろ負傷したレベッカとロビンが別れる事になってしまうので却下だ。
それならこのまま、一度旧王の台地へ戻った方がいいのかもしれない、とロビンは考える。
あそこには錦えもん達もいるし、市街地で狩られる心配もしなくていい。
まだ出発して間もなかったため、今いる場所から現王宮はまだ遠く、逆に旧王の台地とはそう離れていない。


「ヴィオラが心配ね」

「ロビンさん行こう!ヴィオラさん1人じゃ…!!」

「ですがレベッカ様のその怪我では無理は禁物れす」

「ならロビンさんだけでも行って!!私はルーシーの助けになりたくて来たの!こんな風に足を引っぱるために来たんじゃない!!」

「だめよ。あなたを危険に晒すわけにはいかない」

「でもっ!!」

「ヴィオラ様の事なら僕におまかせを!!僕ならイエローカブ達に乗ってまっすぐ飛べますからヴィオラ様にもすぐに追いつけます!!」


元々イエローカブはトンタッタ族の飛行手段。
人間が飛び跳ねて行くより速く、また足をつく必要性すら本来ないのだ。


「そうね…じゃあレオはヴィオラをお願い」

「はいれす!!」

「レベッカ…悔しいでしょうけど…」

「ううん…いいのロビンさん」


レベッカは優しく肩に手を置いてくれるロビンに、ゆるく首を振った。
ディアマンテから執拗に狙われるレベッカを、ロビンは充分に守ってくれた。
ロビンが落ちる破目になったのも、レベッカの命があるのも、誰のおかげで誰のせいか、これでもレベッカはわかっているつもりだ。
ただ、ロビンの言うとおり、悔しくて…泣きそうになる自分の顔を、レベッカはパンッと両手で打った。


「レオ!!ヴィオラさんをお願い!!」

「はいれす!!レベッカ様とロビランドもお気をつけてーー!!」


空に融けていくカブトムシと小人を見送る少女の背中に、ロビンは二度と同じ失態はしない、と強く誓った。
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