OP連載

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「(よかった……ありがとうニコ・ロビン……!!!!)」


彼女たちの様子を千里眼で見ていたヴィオラは、レベッカの無事と彼女を守るロビンの存在に、深い安堵と感謝をした。
ヴィオラは現在2段目の上空を飛んでいる。
地上の様子を千里眼で探りながら、幹部達の戦場を避ける。
ディアマンテで痛い目を見た分、ヴィオラは殊更慎重になっていた。
もう自分しかいないのだから、絶対に敵に見つかるわけにはいかない。


「(麦わら達は……3段目…!!)」


ヴィオラの飛ばした”目”の先で、大きなオモチャの一撃によって目を回す牛と、放り出されたルフィとゾロ、ローと彼に抱えられたシノがいた。



「ウーシーッ!!何だこいつら…っ”ゴムゴムのJET銃(ピストル)”!!!」


すぐさま起き上がったルフィが攻撃するが、その大きなオモチャは一体だけではなかった。
軽く数えて十数体はいるだろうか。
ルフィの攻撃を受けて吹っ飛んでいくオモチャの横から後から、次々と他のオモチャが攻撃してくる。
この国すべてのオモチャが人間へとリセットされていたのに。


「シュガーが復活してる…?」

「そのようだな」


何分数が多い。
シノを小脇に抱えたローも、この乱戦の中では攻撃の手を防ぐだけで手一杯になっている。
ルフィもウーシーを庇いながらの戦いで、3段目に上がった途端、彼らの足は完全に止まっていた。



「――”鬼……――斬り”!!!」

「ゾロ!!」

「ルフィ!!こんな所でモタモタすんな!!ここはまかせてお前は先に行け!!」

「わかった!!おいお前らウーシーを頼むぞ!!」

「「はっはい〜!!!」」


倒れたウーシーをジェットとアブドーラにまかせ、ゾロは目の前のオモチャを切り伏せると、ルフィの前に立ちふさがるオモチャへの牽制へと跳ぶ。
ルフィの後にローも続き、土煙で見通しの悪い3段目を走り抜ける。


「悪いなゾロ屋」

「ハッ…!!こっちは暴れ足りねェんだ気にすんな」


不敵に笑うゾロを後に、ローもそれきり前を向いてひたすら走る。
しかしそこで、不測の事態が起こる。
ゾロとルフィに倒されたオモチャ達が復活し、牙を剥いたのである。


「「!!」」


ゾロもルフィも、たった今攻撃している相手がいる。
不意をつかれて横っ面を叩かれるような事態に、ローが”ROOM”を展開しようとした瞬間…
戦場を突っ切って来た何者かによって、そのオモチャ達が尽く轢かれて吹き飛ばされていった。


「ヒヒーーン!!」

「乗れ麦わら!!バルトロメオ(こいつ)のバリアがあればまっすぐ王宮まで登れる!!!」

「キャベツ!!!と馬!!と……誰だ?」


ルフィは窮地を救ったキャベンディッシュとその馬ファルルに喜びをあらわにし、その後に相乗りしている男に首を傾げた。
キャベンディッシュの口ぶりからすると、バリアはその男の能力のようだが、何故かその男、今にも死にそうな程朦朧としているように見える。


「るるるるっるるるふぃぜんばい〜〜〜っ!!?ホンモノだべ〜〜〜っ!!!」

「こらバルトロメオ!!涙と鼻水を飛ばすんじゃない美しくないっ!!」

「ああおれはルフィ!海賊王になる男だ!!よろしくな!」

「ああああああいざづされたっぺ〜〜〜!!!未来の海賊王にっ……じっ自己紹介されたっぺ〜〜〜!!!!」


ガクッ!!


「こら死ぬな!!!まだ王宮に辿り着いてもいないんだぞバルトロメオォ〜〜〜ッ!!!」


顔から出るもの全部出して昇天しているバルトロメオにツッコむキャベンディッシュが、何だかマトモな人に見えてくる。
笑顔で馬に飛び乗るルフィに続いてローとシノも乗ると、さすがに馬の方が重そうに息を詰まらせた。
シノが宥めるように撫でると、振り返った馬が優しい目をキリッとさせて再び前を向く。
優しさと頼もしさを兼ね添えた逞しい馬を、シノは労いの意味こめてもう一度撫でた。


「―――ってお前ら乗りすぎだ!!愛馬ファルルが美しく走れるのは本来2人までだ!!それを麦わらまで乗せるんだぞ!!重量オーバーなんだ降りろ!!!」

「うるせェ」

「……ファルル君はいいって言った」

「まあいいじゃねェか!」

「よくない!!」

「ゴボゴボゴボ…」

「お前は正気に戻れバルトロメオ!!!」


ファルルが息切れしているのは気にかかるが、彼の男気に水を差すのも野暮というものである。
ローは、泡を吹いて心ここにあらずの男を指した。


「ならそいつを降ろせ」

「こいつを降ろしたらバリアが消えるだろう!!お前達が降りろトラファルガー・ロー!!!」

「嫌だお前が降りろ」

「何でだふざけるな!!最悪だ!!まさに『最悪の世代』!!」

「何だ?やっぱこいつがバリアしてんのか?すっげェなァ!!あのオモチャ達全然寄って来れねェぞ!!」


馬の周りに出来た壁が、オモチャ達を阻んで面白いように道が開くのだ。
ルフィが笑顔で前に座る男を褒め称えると、男は安らかな顔をしていた。


「…うん?こいつ寝てんのか?」

「死んだか」

「安楽死にも程があるぞバルトロメオ戻って来い!!」


キャベンディッシュの声は本気で焦っている。
バルトロメオのバリアがあるおかげで突き進めているのだから当然だ。
能力者が意識を失えば当然……バリアが消える。

フッと突然消えたバリアを越え、巨大なオモチャの一突きがルフィ達を襲う。


「言わんこっちゃない…!!”美剣”…”斬・星屑王子(ザン・テグジュペリ)”!!!」


キャベンディッシュの剣がオモチャを真っ先に斬り、後続のオモチャをルフィの”JET銃乱打(ガトリング)”が薙ぎ払った。
事態を察したローが、鬼哭で緑のトサカを殴った。


「――ハッ!!おれは一体なにを……っ!?」

「……いいからてめェはバリアを張れ」

「何でおれがてめェの命令さ聞かなきゃなんねェ!!」

「頼むよ”トサカ”!!」

「!!?(ルフィ先輩が…ルフィ先輩がおれに頼むと…!!あだ名をォ……!?)―――……ハッ!?いいけねェ…!!また昇天しかけたっぺ!!!まかせるべ〜〜〜っ!!”バーリアー”!!!!」



再び指を結んだバルトロメオのやる気を表す大きなバリアが、ブルドーザーのようにファルルの目の前を大掃除しながら突き進んでいく。
ヴィオラはバリアの目指す先、ちょうど4段目にさしかかる場所で合流できるよう、大地を蹴って飛び上がった。
その姿をグラディウスに目撃されていたのは、不運としか言いようがない。


「あれは……ヴァイオレット!!!」


2段目でコロシアムの戦士達と戦っていたグラディウスが、あたりの戦士をひとしきり片付けた所であったのもタイミングが悪かった。
戦闘力は差し置き、ヴィオラ程慎重な女が動くのは、それなりの事情を抱えているからに他ならない。
グラディウスは迷わず3段目に向かって飛び上がる。
推進力が重力に負ける前に、パムパムの実の能力で加速し、推進し続ける事により、ヴィオラへと接近する。
ヴィオラがグラディウスの射程に入った時、彼女はやっとその存在に気づいた。


「あなたは…グラディウス!?」

「遅い!!”破裂弾丸(パンクバーラ)”!!!」


一気に3段目の上空へと舞い上がるグラディウスから、いくつもの弾丸がヴィオラを標的に放たれた。
抵抗する術がないヴィオラは、下を見る。


「(まだだめ………せめてあと一歩跳べれば……!!)」


「ヴィオラ様ーーーーっ!!!!」


「!?」


貫かれ、弾け飛ぶはずの弾丸がヴィオラに降り注ぐかと思われたその時、反射的に閉じたヴィオラの目を開かせたのは、馴染み深い小人族の声だった。
人間を連れていた時とは、比べ物にならないほどのスピードで飛んできたイエローカブ達が運んできたレオが、ヴィオラと弾丸の間に入る。


「レオ!!?――っぐゥッ!!!」


しかし、レオの小さな身体ではヴィオラを完全に庇いきる事など、最初から無理であった。
ヴィオラに直撃するはずだったものだけ引き受けたレオが、イエローカブ達とともに落ちていくのを見送る余裕もなく、ヴィオラの腕や足が、弾けた弾丸の余波で傷を負う。
片方のイエローカブ達も目を回して羽を止めた。


「ああっ」


もう片方だけでは浮力が足りず、少しずつ落下していくヴィオラはまさに、格好の的であった。
尚も上昇を続け、接近してきたグラディウスが肉薄する。


「死ねェッ!!ヴァイオレット!!!!」

「っ」



「”シャンブルズ”」



グラディウスに殺されるはずだったヴィオラは、次の瞬間馬上にいた。


「ぐきゅゥ」

「えっ…トラファルガー!?」


パッと消えたヴィオラの代わりに、上空でグラディウスが屠ったものは

「靴!?」


ズタズタにされ、落下していくそれの片割れは、同じく馬上のシノの足にあった。



「どうして…どうやって…!?」

「こいつがお前の声がすると………そろそろどいてやれ」

「えっうそシノ!!ごめんなさい!大丈夫?」

「きゅぅ……」


咄嗟にローに自分の靴を差し出したシノは、シャンブルズされたヴィオラの下敷きになっていた。
人口密度の上がった馬上で、ファルルがそろそろやめくれ…とばかりに息切れを起こしている。
気づいたヴィオラが身を浮かせたのを見計らい、ローがシノを引きずり出して抱える。
座り直したヴィオラは、ローに向き直って礼を述べた。


「でも助かったわ…ありがとう…!!」

「そんな事はいい。それより」

「ええ…!シノ鍵よ!!」



忌まわしい海楼石の錠が、ついに開く。



********

グラップはフランキーの例の「ホデュアアアア!!」から。
原作では二輪でしていたものを、四本樹でアレンジしてみました。
いくらヒラヒラしていても、さすがに雑巾絞りには弱い気がする。
ロビンがいてレベッカに怪我を負わせるのは少々迷いもありましたが、相手がディアマンテで空中という条件など色々考慮して、痛みわけのような状況に落ち着きました。

ゾロといえば”鬼斬り”のイメージが一番強いのでやってみた。
最近あまり使ってくれない気がする。
他のもいちいちカッコイイけど、使用頻度が高いのって”煩悩鳳(ポンドほう)”系かな?
とにかくやっとロメオが出せて嬉しい。
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