OP連載

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(キャプテン………!!!)


追い詰められたローに、トレーボルの可燃性の高い攻撃が襲う。
強敵2人に片腕瀕死のローが、いつまでも耐えられるわけがない。


(お願い間に合って!!!)


シノは強く祈りながら、島の動物達を先導して中心地を目指していく。
本当は今すぐ王宮へ向かいたい気持ちを押し殺して―――すると、瓦礫に挟まれた母親の前で泣き叫ぶ子供の声を拾った。


「”フレア・ヴィブラート”!!」

「きゃあっ」

「えっ!?」


母親の上にあった瓦礫が爆発し、母娘は少し離れた場所で小さな人に抱えられていた。
娘よりやや年上だと思われる少女の腕から降ろされると、娘が泣きながら母を呼んで飛びついた。


「あっあのっありがとうございます!!」

「おがあざ〜〜ん!!!」

「………」


シノはまた、ついそっぽを向いてしまう。
覚悟を決めて島中に声を上げたくせに、やはり見知らぬ人間に話しかけられるのは苦手だ。
背中を向けて「…中心はあっち」と指差すだけで精一杯である。
そんなシノに、母娘は「あのっ!!」と再び声をかける。
母の足は片方潰れていた。


「どなたか存じませんがお願いします…!!どうかこの子も一緒に連れて行ってはくれませんか!!私はこの足ではもう逃げられません!!お願いします!!!」

「えっうそヤダよお母さん!!!」

「ダメよ…あなただけでも……!!」

「いやだよ!!!ねえお姉ちゃん!!お願い!!私頑張って走るから!!だからお母さんを連れてって!!!ねえっ!!!」

「………」


人見知りの管制官は今、見知らぬ親子に縋られてかなりピンチであったが、それよりも―――


「(…悩んでる暇なんてない……キャプテンの方も”彼”だけじゃ……―――!!!)」


遠く聳える王宮の方が気がかりだった。



********



「―――よォトラ男」


トレーボルを斬り、迫るドフラミンゴの一撃を受け止めたゾロは、刀を銜えて不敵に笑った。
息を荒げて見上げたローに、彼は言う。


「男が上がってんな」

「……ハァ…ハァ……”ゾロ屋”……」

「ロロノア……おいトレーボル!!―――チッ油断しやがったか……!」


狙ったのか幸運か、トレーボルがベタベタの中に隠していた本体ごと斬られているのは、夥しい出血量から明白だった。


「何しに来た?お前の船長は今”下”にいるが……?」

「そっちはいいさ。それよりこいつんトコの”チビ”が喧しいんで…な!!」

「フッフッフ!!」


二刀で斬りつける糸を捌き、攻撃に転じたゾロから身を離したドフラミンゴが、再び空中へ足をかける。


「互いに部下が有能たァ…中々いい海賊団(ファミリー)のようだな」

「あァ!?あれが喧しくなくて何が…っ迷ってねェ!!……”チビ”だろうがおれよりも!!」

「………」


どうやらゾロには何かが口やかましく抗議しているらしく、何も無い場所に向かって喧嘩腰になっている。
空中にいるドフラミンゴからすると、かなり明後日の方向である。
しかし、いつまでも見守ってくれる程ドフラミンゴは甘くはない。
ゾロが何かに気を取られている隙に、ドフラミンゴの糸はローの目前まで迫っていた。


キィイン……!!


「二対一の次は手負い相手か?七武海!!」

「フフフ!おれの事はどうでもいいのかと思ったよ」

「そりゃ悪かった…!!」


ローに届く前に止めた5本の糸を払うと、払われた力を利用してもう片腕の5本が斬りつける。
それを黒刀で受け流したゾロは、再び踊るように空中に逃げたドフラミンゴへ斬撃を飛ばす。
その姿をただ見ている事しか出来なかったローは歯を食いしばると、己の腕が落ちている方へと這いずる。


「はいれす!」

「…!」


腕の方から向かって来て驚いたローがその下を見れば、小人族の兵長の姿があった。
彼は幾分か小声でローに話しかける。


「ゾロランドがドフラミンゴを引きつけているうちに……!!」


グラディウスに撃ち落とされてなお、ひまわり畑のヴィオラが気になり上を目指していたレオは、誰かに怒りながら下って来ていたゾロとバッタリ会ったのである。
その誰かはシノで、シュガーのオモチャを倒したゾロを王宮に行かせようとしていたが、言うとおりに動かないので逆に降りてきていたらしい。
正直、動物達を先導しながら、この困った迷子野郎をナビするのはさすがのシノも難しかったので、レオが加わって逐一軌道修正してくれるおかげで助かった。


「……腕だけよこせ」

「えっ?」

「いいからよこせ…っハァ…おれは逃げねェ……!!」


レオの手から右腕を奪うようにして受け取ると、ローは震える腕で縫合すべく傍らへと置いた。
そこへコツコツ、とヒールの音が近づいてくる。
彼女は静かにローを見下ろした。


「ダメよ」

「ヴィオラ様!!」


ゾロと共に王宮へ上がって来ていたのは、レオだけではなかった。
キャベンディッシュがハクバに代わったり、色々とゴタついてはいるようだったが、ひまわり畑の敵はグラディウスただ1人。
通りすがりのゾロを追わせまいと対グラディウスを請け負ったバルトロメオと、愛馬を撃たれたキャベンディッシュがいる限り、ヴィオラが便乗して王宮へ向かうのも難しくなかった。


「あなた……今日1日で一体幹部を何人倒したの?その傷で能力を使いすぎれば死を招くわよ」

「お前こそ何しに来た。死にに来たんなら勝手に死ね……邪魔はするな……ッ」


自らの能力で腕を繋げようとしているようだが、身体は限界を訴えるかのように息が荒く、震えている。
ヴィオラは聞こえよがしにため息をついた。


「はぁ……レオ、手伝ってあげる事は出来る?」

「おまかせください!ローランドの腕は僕がくっつけてみせます!!」

「何…?」

「僕のヌイヌイの実の力で腕をつなげれば、マンシェリー姫の能力で元通りに治せるはずれす!」

「ありがたいが…そんな暇はない…!」


マンシェリーの現在地は知らないが、ドフラミンゴのいる王宮近くに連れてきているわけがない。
今すぐ戦えなければ意味がないのだ。
ロー自身医者なのだから、繋げてすぐ動けば元の木阿弥である事はわかっている。
繋ぎ合わせただけでは、またすぐに千切れてしまうだろう。
だが、それでも


「おれは……13年間…ドフラミンゴを討つ為だけに生きてきた……!!
 その為に…”麦わら屋”を巻き込んだ……!!!そのおれが…っおめおめと逃げるわけには……ハァ…いかねェんだよ……!!!」

「……」

「死んだのならそれまで……!!これはおれのつけるべき”けじめ”だ」

「―――そう……それなら――――私と同じね」


花の髪飾りを落とし、マントも落としたヴィオラが握っていたのは短剣だ。


「私が死ぬか、あいつが死ぬかよ!!」

「………同感だ」
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