OP連載

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(マンシェリーは……旧王の台地の中から動いていない…?)


ローの腕の治療をお願いしたいマンシェリーは、カブさんとやらと一緒に王の台地内部に身を潜めているらしい。
下手に動き回るよりは、避難民もいるが戦力もある程度集中している旧王の台地を離れない方が安全だ。
飛行可能なディアマンテもいるのだから―――そのディアマンテも、現在旧王の台地の屋上となった場所でキュロスと戦闘中だ。
遠巻きにしながらも、やけに負傷者が多く、キュロスの動きが鈍い。
会話や動きを盗み聞く限り、誰かを庇った為のようだ。
錦えもん達のような手練れも数多く集結している為、それも長くは続かなかったみたいだが…


シノは一連の事情を把握すると、マンシェリーのいる場所まで飛んだ。



「「!!?」」

「(しーっ)」


敵か!?と驚くマンシェリーとカブに、シノは唇の前で人差し指を立てた。


「シノさん……!?ご無事で…ああっこんなにお怪我を……助けていただいてありがとうれす……!!」

「!という事はあなたが姫を……!」

「いいの……マンシェリーも…信じてくれてありがとう」

「〜〜っ私こそ…っ!!あのっお怪我を治します…!!」

「待って」

「いいえ待たないれす!!助けてくれた方のお怪我も治せなくては私は…っ」

「姫…」


カブは姫の気持ちを汲んで口ぞえしようとした。
しかし、シノはマンシェリーの力が発動する前に後に避けながら早口で捲くし立てた。


「私を治してくれるなら代わりに治して欲しい人がいるの…!!」

「えっ」

「お願いマンシェリー…」

「シノさん……」


満身創痍の己の身を省みず、治療を望む人がいるのだ、このひとには。
マンシェリーは、それなら2人とも…!と言おうとして、前に出された手のひらに口を噤んだ。


「え?」


何事か、と新たに口を開こうとした時には、彼女の姿は消えていた。


―――マンシェリーとカブが揃って口を開け、首を傾げる少し前…


旧王の台地屋上のキュロスvsディアマンテの勝敗が決しようとしていた。


「”片足”でよくやるもんだ……だが……!!!」


リク王、そして国民達に向けられた刃は、錦えもんやカン十郎などの腕に覚えのある戦士達によって封じられたディアマンテ。
他を標的にする事も出来なくなり、遠巻きにする国民たちの中心で、キュロスとディアマンテは剣を結ぶ。
しかしそれも、徐々にディアマンテの分が悪くなってきていた。
片足になってなお、旧コロシアム最強の戦士は現コロシアム最強を上回るというのか。


「足が何本だろうと関係ない!!それを言い訳にするくらいなら戦場に立たん!!
 ない足は大恩人に捧げた私の誇りだ!!!」

「ウハハ!!聞いたかリク王?お前のせいで無くした足は誇りだとよ…!!!」

「…っ」


リク王の、食いしばった歯の間から漏れ出た己の名が聞こえたのだろうか。
ディアマンテを睨むキュロスの目が、一層厳しく歪む。


「じゃあその”誇り”で…!!守ってみせろよキュロ〜〜ス!!!」

「!?」


紙のようにヒラヒラとした物体を取り出したディアマンテが能力を解いていくと、それらは打ち上げ花火の砲台のように膨らんだ。
いくつもあるそれから打ち上げられた紙吹雪が、ヒラヒラと空を舞う。
それは、ディアマンテが能力で紙のようにヒラヒラとさせていた何かだ。


「当ててみな!!この紙吹雪!!!さァ能力を解くぞ!?
 ”解除(ヒラリリース)”!!!
 ――その正体は!!」

「!!?”棘の鉄球”!!!」

「見ろ美しい!!!まるで星屑の様だ!!!」

「!!!まずい…っ!!」


キュロスは反射的にリク王を振り返った。
傍にはタンクがいる。
リク王の身は、彼が身を挺して守るかもしれない。
だが他は?
錦えもん達とて、己の近くにある”棘”だけならどうにか出来ても、数多の国民達は?


「ウギャーーーーッ!!!死ぬゥーーー!!!」

「皆それがしの近くへ集まれ!!――出でよ!!」


カン十郎が地面に描いた円のような物が出てくる。
おそらく傘だと思われるそれの取っ手を持たされたタンクの周りに人が続々と押し寄せてくるが、この場にいる全ての人々を覆うには圧倒的に面積が足りなかった。
カン十郎は素早く次の傘を描いていくが、全員が隠れられる傘を描ききるより、”棘”が落ちる方が早いに決まっている。


「せいぜいもがけ!!アディオス!!”死の星屑(デス・エンハンブレ)”!!!」
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