OP連載

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ベラミーを倒したルフィが怒りのまま飛び出し、現在はゾロと選手交代という形で戦っていた。
中途半端に交代させられたゾロにも思うところはあるようだが、最初からルフィが討つと公言していた相手である。
シノの連絡とローの危機さえ重ならなければ、ゾロもあえて横入りする理由はなかった。
不完全燃焼には大層気を悪くしていたが……何せ、倒した最高幹部は一撃で終わったのだから。


「チィッ仕方ねェ…!!さっさと片付けろよ!!」

「まかせろ!!!」

「吠えるな…ガキが」


戦線を離脱したゾロが、しかめっ面でロー達の所へ降りてくる。
黒いスーツに目立つ亀裂が、彼の負傷を伝えていた。


「ロロノアその足…!!」

「あ?ただのかすり傷だ」


足跡が赤く掠れる程のそれを見つけたヴィオラに適当に返したゾロは、ローの前に屈んだ。


「オイ立てるか」

「…どういう意味だ」


巨大な衝突が空気を割り、空を揺らして大地に響いた。
ゾロは覇王色の衝突を背に振り返りもせず、親指だけで指して続けた。


「ここにいたって意味はねェ。わかってんだろ、今のお前じゃいい的だ」

「それでもだ……あいつだけは…!!あいつだけは……!!!」

「ああっ!やっと繋いだばかりなのに…!!」


おぼつかない足取りで立ち上がったロー。
繋いだ腕も危うげに揺れ、レオも慌てて駆け寄る。


ルフィと戦っていたドフラミンゴが、王宮に寄り集まった数人を見て笑みを深めた。


「ロー……ヴァイオレット!!!」

「!お前の相手はおれだミンゴ!!!」

「フッフッフッ!!」


ルフィの攻撃を弾き返し、ドフラミンゴは目標に指先を向けた。
いち早く気づいたゾロが刀を抜き、ドフラミンゴの指先に呼応するかのように、彼らの周囲から何かが出現する。
地面を突き破る角のようでもあるそれは、突然ぐにゃりと曲がった。
ロー達を取り囲むように発生した”角”は、驚くほどの柔軟性を見せつけ、彼らを襲う。


「”大波白糸(ビローホワイト)”!!!」

「”黒縄・大龍巻き”!!!」


四方八方から、中心の標的を突き刺すように集まった”角”を、剣技の起こした竜巻が切り刻み、風に攫って舞い散る。
咄嗟にローを支えたヴィオラは、レオに導かれるまま”角”の無い場所へ避けようとするが、それは次々と地面から生えてくる。


「まるでピーカのよう……!!」

「何で地面から糸が!!―――”鷹鞭(ホークウィップ)”!!!」


更なる追撃をかけようとしていたドフラミンゴに、ルフィの足技が伸びる。
予想していた横槍を、糸を使って空を飛んで避けたドフラミンゴは、不可思議であるという顔のルフィの無知を哂う。


「いいかひよっこ”悪魔の実”の能力にはまだ『覚醒』という上の世界(ステージ)があるんだ…!!!
 能力は稀に『覚醒』し己以外にも影響を与え始める!!!」

「色んなものが糸になる!!超人系(パラミシア)じゃねェみてェだ!!」


ロー達だけではなく、ルフィの方へも糸の”角”が、波のように押し寄せてきた。
波を捌いているその隙に、ドフラミンゴはロー達の方へ飛んでいく。


「っにゃろ!!」

「わかりやすい」

「!?」


王宮…地上の波を捌いているゾロに、ドフラミンゴの襲来までは防げない。


「おいルフィ!!!」

「っわかってる!!!」


ルフィはあえて糸の波の一突きを受ける代わりに、武装色の黒い腕を大きく膨らませた。


「…ッ”ゴムゴムの灰熊銃(グリズリーマグナム)”!!!」

「スキだらけだ!!!”荒浪白糸(ブレイクホワイト)”!!」


他の”角”とは比べ物にならない大きさの糸の波が二つ、放たれた両腕ではなく、ルフィ本体に襲い掛かった。


「ぐわあっ!!!」


「麦わら!!」

「ルフィランド!!」


ルフィの身を案じていたヴィオラ達は、次の瞬間、顔色を変えた。
他人の心配から、目前に迫る敵へと意識を塗り替える。


「フッフッフ!!今更何をしに来た?」


まるで空が我が物であるかのように、軽々と地面に降り立ったドフラミンゴに、ヴィオラは短剣を向ける。


「――10年……ドンキホーテファミリーの幹部をしていた私が何のケジメもつけないわけにはいかない!!
 私が死ぬか…あなたが死ぬかよ…!!”ドフィ”!!!」

「フッフッ…!!情熱的だな…”ヴァイオレット”」


ローから離れ、一歩ドフラミンゴへ踏み込んだヴィオラの隣には、レオの姿もあった。
しかし、彼ら2人でドフラミンゴに敵うわけはない。
ヴィオラとロー目掛けて糸の波を出現させれば、残されたメンバーで最も厄介な男が剣を振るって防いでいる。


「大変だなロロノア!!この場で最もおれに手傷を負わせる可能性があるお前は、足手纏いのお守りかァ?」


ヴィオラの攻撃も、小人の攻撃も、会話の邪魔にすらならない。
短剣は触れる前に糸に弾かれ、小人族もまたそうである。
ヴィオラの支えがなくなったローは膝からくずおれ、繋げたばかりの腕を押さえて倒れた。


「おれは仲間の”失敗”は咎めない」

「はっ!?」

「ああっ」

「だが”裏切り”は許さねェ……!!」


ヴィオラとレオの動きが止まった。


「何をしやがった!?」

「おっと…危ねェ!動くなよロロノア」

「!!」


糸の波を全て断った隙にと放たれたゾロの太刀筋を避けたドフラミンゴは、ヴィオラとレオを己の前に出す。
盾のように出された彼らに踏みとどまった一瞬で、糸の波は再生し、ゾロの背後で波打っている。


「どうせお前みてェな奴は動くなと言われたって動くに決まっている……そうだろう?
 そうするしかねェのはわかりきってるもんなァ!!
 そういう思いきりのある奴は嫌いじゃねェ……!!だが!!
 ほんの少しでも妙な真似をすれば、こいつらの命とお前の命……両方同時に散る事になるぜ?」


ヴィオラ達と救おうと動けば、背後の角に突かれ。
背後の角を片付けようとすれば、その隙にヴィオラ達を相討たせる。
ヴィオラの手元に、どこからともなく落とした短剣がふらりと飛び込んでくる。
嫌な予感に、握力なんてこめていない。
こめたくないのに、指が勝手に剣を握る。


「嫌…嘘……っ!?」

「そんな小っせェ小人の体じゃァ柱に貫かれるようなもんだろうなァ?ヴァイオレット……!!」

「っぐっ離せえええっ!!!」


何をさせようとしているのか。
ヴィオラに続き、レオも悟ったようである。
そんな事をさせるわけにはいかない、ともがき続ける。
もがけばもがくだけ、糸は小さな体をきつく、きつく締め上げる。


「うわあああああっ!!!ヴィオラ様にそんな事はさせるものれすかァーーーっ!!!」

「レオっ!!レオ!!!」


背後から、ゴムの男が迫っているのはわかっていた。
しかし、間に合うわけはない。
ドフラミンゴは、同じくこちらに駆け出してくるゾロに糸の波を差し向け、背後のものと合わせて挟撃させる。
その間に小人を殺させ、ルフィを迎え撃とうと振り返ったところで



「シノーーーーッ!!!!」



倒れていたローが叫んだ。
倒れた瞬間から、目に見えないほど遠くに広げていた”ROOM”の中に入って来ていたシノの場所は把握していた。


「”シャンブルズ”」


出方を窺っていたシノがヴィオラと入れ替わり、”フレア・ヴィブラート”を纏ったシノの蹴りがローの意図に応えた。


「”ゴムゴムの”ォ……!!”火拳銃(レッドホーク)”!!!」

「グゥオアアァッ!!!!」


結果、真に重い挟撃を受けたのはドフラミンゴの方となった。
純粋な破壊力もさることながら、打撃力に劣ったシノの方へ倒れこむドフラミンゴを避け、シノはローを見る。
その目が言っていた。

まだ終わりじゃない、と―――シノは音速移動でルフィの背後に飛んだ。


「”シャンブルズ”―――どけ”麦わら屋”!!!」

「!!」

「”ガンマナイフ”!!!」



ローのいた場所に転がったシノは、炎のような揺らめきを見せるローの刃がドフラミンゴに背に突き刺さるのを見た。
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