OP連載
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「ガフ!!」
ルフィとシノの挟撃で吐血したかと思いきや、喉の奥からより多くの血が溢れ出る。
血だまりを作った地面に倒れていくドフラミンゴはだが、ついてしまった膝で踏ん張り、それ以上倒れはしなかった。
「ッカハッ……!!」
”ガンマナイフ”は体内を破壊する刃だ。
ドフラミンゴの内臓は今、果たしてどのような形に切り刻まれたのだろうか。
内臓を直接破壊されて、それでも倒れないドフラミンゴの気迫たるや凄まじいものがあった。
最高幹部はもういない。
たった1人で囲まれ、重傷を負ってなお、けして倒れないドフラミンゴに圧倒されそうになったのはシノだけではないはずだ。
このままでは、ドフラミンゴの傍にいるローの身が危ういかもしれない。
「……ッッロォーオオオオッ!!!!」
「!?」
ドフラミンゴの指が動き、ローが糸の感触を感じてすぐ、それは消えた。
「キャプテン!!」
「”ゴムゴムのJETスタンプ”!!」
ドフラミンゴの背中に倒れこもうとしていたローを抱え、シノが距離をとるのと同じくして、ルフィの技がドフラミンゴを大きく吹き飛ばした。
「ハァ…シノ……どけ…」
「キャプテン」
瓦礫に頭から突っ込み、呻き声を上げるドフラミンゴだけを見て、ローはシノの手を払おうとする。
しかし、最早立ち上がる事さえ困難なローはすぐにふらつき、シノの手が伸びる。
「シノ」
「キャプテンが行くなら…私も行く」
咎める視線が鳴りを潜め、支えられる事に甘んじたローとシノはゆらゆらと歩いていく。
追撃をしようとしていたルフィは、心配そうに拳を構えて止まった。
「おいトラ男!!」
「”ROOM”」
再び”ROOM”が広がる。
先程までとは違い、倒れたドフラミンゴが入るだけの小さな範囲だ。
「ドフラミンゴお前は――もう助からねェ……”ガンマナイフ”は外傷なく内臓を破壊する……
医者が言うんだ間違いない…」
「ウ…!!」
立っているだけでもやっとのローの腕の継ぎ目に、シノの目がいく。
腕を案じるシノの目が、パチパチと電気の存在を捉えた。
「てめェに都合のいい集団をお前は家族(ファミリー)と呼び!お前の暴走を止めようとしていた実の弟コラさんを射殺した……」
「ッグ…ハァ……ああ……裏切られ…残念だった…ハァ
――おれに銃口を向けるとは」
「コラさんが引き金を引かない事をお前は知ってた…」
「…フフ」
「おれなら引けた」
「!!…フッフッフッフ!!だろうな…ゲホ!!お前は…おれと同類だ」
「…ああそれで結」
「違う」
結構だ、と肯定しようとしたローを、眉をひそめたシノが真っ先に否定する。
「全然……違う」
そんな奴に、誰が己の身も省みずついてゆこうとするか。
ドフラミンゴのような奴に、シノもベポ達も惹かれたわけじゃない。
「……」
心外だと訴える黒い瞳に、ローの目元が僅かに歪む。
その様を見たドフラミンゴは、クツクツと込み上げる笑いと血反吐に喉を鳴らす。
「ック…ッフッフッフ…!!お前の聞きてェ台詞を言ってやろうかロー…」
「!?」
「おれにとってコラソンは足手纏いで目障りだった…!!あの日ブチ殺してせいせい…」
「”カウンターショック”!!!」
「!!!」
その言葉に顔色を変えたローが跪き、合わせて動いたシノも膝をついた。
「ウグ!!!」
「……!!くたばれ悪魔野郎!!!」
ドフラミンゴが大きな血反吐を吐く。
それだけならまだしも、ローの口からも赤が滴る。
「っ!!」
半死半生なのはドフラミンゴだけではない。
己の攻撃の付加すら、今のローには毒となって返ってきている。
咄嗟に、やめさせようとドフラミンゴから引き離そうとした自分の腕を震わせ、シノは歯を食いしばった。
命を賭けて振るうローの腕を、邪魔するわけにはいかない。
そうして踏みとどまったシノの腕を、力を失くしたローがすり抜ける。
「!キャプテン!!」
「ハァ…ハァ…」
ローの体が何かと衝突する前に、シノはその肩を掴んで引き寄せる。
ドフラミンゴの体はそれ以降、ピクリとも動かなかった。