OP連載
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「やった…の…?」
答えを得ようと、シノは音を探る。
するとドクドクと脈打つ心臓と、かすかに流れる呼吸の音を感じた。
息を荒げたローが目だけで問う。
「……まだ生きてる」
「…!」
さすがに身体の中がどうなっているのかまでは、直接触れられる程度の距離まで行かなければわからないが、”ガンマナイフ”を受け、ダメ押しの”カウンターショック”まで受けて、何故生きているのか不思議でしょうがない。
ロー自身、己の能力がどんなものかを知っているから絶対的な死を疑いはしないが、そのしぶとさには辟易したようだ。
「しぶとい奴…だが…じきくたばる……」
適切な処置でもしない限り。
それこそ、ロー以外に処置出来る人間はいないだろう。
ローを瓦礫の少ない場所へと彼を移したシノは、いつぞやを彷彿させる感じで胸の中に手を突っ込んだ。
「ぷはっ」
「ハァ…お前…また…!」
カブトムシのような小人を取り出したシノに、イラついたローの声がかけられる。
「カブさん!!」
「!レオ」
その名を聞いたもう1人が中から出ようともがいて、シノの胸をぽよんぽよんと揺らすので、シノは「ちょっと待ってね」とまた手を突っ込んだ。
まだ何か入れてたのか。
ローの眉間の皺が、また深くなる。
「…お前おれの言う事聞く気ねェだろ」
「?」
スータの時だって別に、胸に友達挟んで持ち歩くなとは言われていない。
不思議そうに瞬くシノに、ローは動かぬ手を恨めしく思った。
刀を仕舞ったゾロが、ルフィを呼ぶ。
「おいルフィ!!そいつどうすんだ?」
「どうするって?」
「まだアレが消えてねェ」
「「鳥カゴ……!!」」
即ち、気絶すらしていないという事だ。
ルフィとローが空を区切る線を見上げ、シノが手を止めた僅かな隙を、何かが貫いた。
「”弾糸(タマイト)”」
今しがた、腕さえ無事ならただじゃおかないと睨みつけていた頬が、ゆっくりとローの方へ近づいてくる。
死ぬ直前の走馬灯のように、一瞬遅れてやってきた吐血の飛沫さえ、鈍く動いて浮いて見えた。
シノの鳩尾からは、血濡れの糸が生えていた。
「――――、ッ」
シノの背中を貫いたものの出所を即座に見たルフィは、驚きの声を上げた。
「え!!?」
死の瀬戸際にいたはずのドフラミンゴが、音も無く立ち上がっていた。