OP連載

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国中が見上げる空の一騎打ちを制したのは海賊、麦わらのルフィ―――穴の開いた風船のように飛んでいく勝者を、ローが能力で受け止める。


ボロボロのルフィがシノ達のように転がると、空にも変化が現れた。



『空を見よ!!!ドレスローザ!!
 ハァ…消えてゆくのは……”鳥カゴ”か…!!ドフラミンゴの”支配”か!!!』



”鳥カゴ”の終わりを告げる声と共に、ドレスローザは青い空を取り戻していく。



『”ドレスローザ国防戦”!!ハァ…
 
 海賊”ドンキホーテファミリー”2千人!!
 VS.
 この地に居合わせた”運命の戦士達”……!!!その”大将戦”
 
 ”王下七武海”ドンキホーテ・ドフラミンゴ
 VS.
 剣闘士”ルーシー”!!

 ひょーひゃ…』


段々と発音が怪しくなっているギャッツ。
それが嗚咽のせいである事は言うまでもなく、そこかしこから叱咤激励の声が上がる。
皆、気持ちは同じであった。


『ひよ……勝者は…!!!
 ル゛ゥーーー〜〜〜!!!シィィィ〜〜〜〜〜〜〜!!!!』



国中が咽び泣いた。


シノ達のすぐそばでも、レベッカの膝に乗せられたルーシーの顔が、滴り落ちる涙でずぶ濡れになっている。
麦わらの一味やローより、長くこの国で悲劇の隣にいたシノの目にも、再び涙が浮かぼうとしていた。
隣で壁に背を預けていたローが身じろぎするのを肌で感じ、ローの中でも積もりきったものが溢れようとしているのかもしれないと思ったシノが顔を背けた途端、藪から棒に引き戻す手があった。


「!」


瞬きを忘れたシノの目を、溢れようとしていた涙が沁み込み、潤していく。
視界の端の出来事に、ルフィを見下ろして泣き続けていたレベッカが顔を上げた。
目の前で起こった事を理解した途端、その頬が一気に紅潮する。
思わず口元を両手で覆うレベッカの目線は、重なる男女の姿に釘付けとなっていた。



「―――ん、……!?―――んんゥ!?」



突然触れ合った唇に、シノが混乱しているのは目に見えていた。
にも関わらず、息の伝わる距離で僅かに離れた唇から放たれた言葉は無情で、熱かった。



「…るせェ……黙ってろ…ッ―」



そしてまた繋がる唇が深みにはまっていくのと同じ様に、2つの身体が小さく纏まっていく。
呆然とそれを見ている事しか出来なかったレベッカはハッと気を取り直すと、慌てて顔を背けた。
それでもやはり落ち着かなかったレベッカは、ルフィを引きずって数メートル離れた壁の陰へと身を潜める。
十代半ばの少女には、目にも、耳にも刺激が強かったのだ。


少しばかり居心地悪く過ごしていると、2つの身体に隙間が出来るのがわかって、ホッと胸を撫で下ろす。
気づけば涙は止まってしまっていて、何だかそれがおかしく思えてしまって…


「……ルーシー……ありがとう………」


涙ばかりが零れて言えなかったお礼が、やっと言葉に出来た。
今度は、ちゃんと目が覚めてから言いたい。




「……キャ…プテン……?」

「何だ」

「な、何だって……何だはこっち……」

「悪いか」

「わっ悪いよ!!」


さっきまでの事が信じられないのか、なかば呆然としていたシノもついに声を荒げた。


「何でそうなったの!?」

「……(フイ)」

「そっぽ向くな!」

「……言ったな」

「!」


そういう意味じゃない。
そういう意味で言ったんじゃない!
口が塞がれていなければ、そう言えたのに。
経験した事のなかった唇の感触は、シノの頭を麻痺させてしまう。
一度目の時と同じ様に、服の袖をぎゅっと握る小さな拳をチラリと目に留め、唇を離したローがニヤ、と笑った。


「おれはしたいからする」

「ジャイ○ンか!?」

「何…男か?」

「何をカチンときてるの!?」


こないと思ったのかこの馬鹿は、と眉間の皺を深くするロー。
「一体どうしちゃったの?」と慌てるシノを見下ろし、ローは思った。
どうせ取り越し苦労だろうが、気分が悪い事に変わりはない。
これまで少しもこういった”匂い”を、己から感じていなかったのだと再確認させられた。



「―――ドフラミンゴは倒れた」

「…うん」

「もうコラさんのためだけじゃねェ。これからは……おれも…――」

「……」

「だからお前が一番近くにいろ」


しかとかき抱く小さな肩に、ローの指が食い込む。
端から離す気などないのだ。


「いいな」


小さな頷きだけでは足りなくて懲りずに口づければ、生意気な手が肩を押して怒鳴った。



「もォ……ッ!!わかったまかせろォ!!!」



やっと少しはわかったらしい赤い顔に免じ、ローは小さく笑みを零した。



10年ぶりに晴れ渡る大空の下……ここにも、13年ぶりの晴れが訪れていた。
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