OP連載

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「遅かったな」

「うん…」


シノがキュロスの家に戻ったのは、日が暮れる頃だった。
昼はグリーンビット、その後ドレスローザの動物達に、”献ポポ”作業の終わったマンシェリー、王宮のヴィオラと、挨拶回りは結構な数、顔ぶれとなってしまっていたので仕方ない。


「あっちの家も整理してきたから」

「家?」

「グリーンビットで住んでた所」

「そういえばお前どこに住んでたんだ」

「洞窟」

「それ…整理する意味あったのか…?」


帰ってきたシノとローの会話を聞いていたウソップが、げんなりとツッコミを入れた。
しかし、これが結構整理するものがあったのだから仕方ない。
元々シノが持っていたのは小さなリュック1つだったのに、帰ってきたシノは、それに加えてサンタのように大きな袋を抱えていたのである。


「食べ物とか宝石とか色々貯まってたし…」

「食べ物はまだしも何で宝石!?お前もしかして潜入捜査だけじゃなくて泥棒とかもやってたのか?うちの航海士じゃあるまいし」

「潜入してんのに犯罪犯すとか見つかるリスク負うわけない」

「じゃあ何でだよ?」

「…プレゼント」

「はぁ?」


不可解そうに眉をあげるウソップとは違い、事情を推察したローの眉が片方、不自然に上がった。
後ろめたくないはずなのに、何故かドキッとしてしまったシノは、もごもごと少し恥ずかしそうに答えた。


「貢物…?」

「お前どこの殿様女王様!?って…お前姫とかって言われてたなそういえば!!」

「……」


そも、シノは姫になどなったつもりはなかったのもあり、騒ぎ立てられて恥ずかしいやらで、シノの顔がだんだんと不満そうに膨れていく。
同じく死線を越え、少しは慣れて受け答えが出来るようにはなったとはいえ、まだまだシノが気遣い義理立てするような仲とは言えない同盟関係の海賊のウソップが相手である。
貴様に話す事などもうない、とばかりにシノがそっぽを向くのは当然の事であった。


「ってオイ…!」

「しつこい男性は嫌われるわよウソップ」


ロビンには、彼女の持つ袋に一緒くたにされた物の中で、一際輝きを放つそれらがどうして貢がれているのか、大体の予想はついていた。
島の王というだけではなく、あの小さな執事が言っていた事である。
日々求婚者が絶えない、と。


「フフ…」


自分が笑われたのかと悔しがり、話題から離脱していくウソップは知らない。
ロビンが何を微笑ましいと思ったのか。
すると、食べ物だけをテーブルに出していたシノが、ロビンに目をとめた。
すぐに目が合ってしまい、動きが止まっているシノに、何かしら、と首を傾げてみせるロビン。


「…あの……紅茶の葉もある、よ……」

「まあ嬉しい」


キュロスの家は長い間人が住んでいなかった事もあって、ここにあるのは今朝方キュロスや小人達が調達してきた闘魚や、丸のままの野菜や果物が少しと保存食、飲み物は酒か水くらいだったのだ。
国中が物資不足の中、嗜好品といってもいい紅茶が手に入る事も勿論だが、彼女はおそらく船の中での事をよく覚えていたのだろう。
サニー号のダイニングで食事していた面々の中で、ロビンが紅茶に口をつけていたのを。


「夕食後にいただこうかしら」

「(こくり)」


気心の知れた仲間に喜ばれるのとは、また違った気恥ずかしさがあるのだろう。
照れた様子のシノを見て、ロビンはやはり、思いやりのある優しい娘だと思っていた。


初対面の時からそうだった。
骨だけのブルックの皮を気遣ったり、ナミが下手だと両断した海図に怒ったり。
そんな娘に一途な献身を向けられていたから、きっと……


夕食を終えた後、2人はお茶を持って小屋の外に出ていた。
月明かりだけの花畑に腰を降ろした2つの人影を守るように、窓辺にいたロビンはそっとカーテンを閉じた。
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