OP連載
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麦わらのルフィを中心とした、あの超大規模な宴を終えてから――
麦わらの一味とローとシノは、バルトクラブの海賊船ゴーイングルフィセンパイ号という持ち主の趣味が十二分に表れている船に乗り、ゾウを目指していた。
「バルトロメオとにかく『ゾウ』へ急げ」
「(こくこくこく!)」
ローの隣で鼻歌を歌いそうなくらいご機嫌だったシノは、その言葉に大きく何度も頷いた。
何てったって、数ヶ月ぶりにベポと会えるのだ。
楽しみすぎる。
「!?おいルフィ」
「ん?」
「どうやらおれ達懸賞金上がってんぞ」
「えーー!?本当か!?」
「あれまご存知ねがったですか!!じゃおれの部屋に手配書あるんでどーぞどーぞ」
「「どーぞ!!」」
新聞を読んでいたゾロの一言で盛り上がったのは、ルフィだけではなかった。
バルトクラブ一同も赤絨毯をくるくると敷き、左右に分かれてルフィに部屋までの花道を作っている。
そんな中、バルトロメオは親切なんだかおざなりなんだか、思い出したかのようにローへも懸賞金の値上がりを告げた。
「おい!トラファルガーおめェらのは捨てたが『5億』と『2億9千万』さ上がってた」
「ああ…そりゃどうも額なんかどうでもいい……」
「(キリ悪いな…)」
シノも以前ほど懸賞金に関してのこだわりは無くなっていたので、その程度の感想だ。
2億が2億9千万に上がろうと、何かピンとこないというのもある。
どちらにせよ今更な話なのだ。
それより、今はベポで頭がいっぱいのシノだった。
「……、」
バルトロメオの部屋で、麦わらの一味が額入りの手配書を見て騒ぐ声よりもっと先……このまま行けば入ってしまうであろう、先の海域の音を拾ったシノは、その水平線の向こうを見た。
まだ視界にすら入らない遠くに目をやるシノを、ローが見下ろす。
「――距離があるから全容はわからないけど……多分…雹が降ってるみたい。かなり大きいのが…雨みたいに」
「……おい」
「なんだァ?」
声をかけられたバルトクラブのクルーは、麦わらの一味でなければ割とメンチきってくる傾向にあるようだ。
船長クラスならともかく、よその一クルーがローにこんな態度をとるのも珍しいな、とシノは少しだけ感心する。
ローの後から。
「これから先、雹の降る海域がある。航海士に注意するよう言っておけ」
「うちにそんなのいるわけねェべさ。おれら陸のギャングだべ?」
「「!?」」
耳を疑う言葉に、ローとシノは一瞬、ピシリと固まった。
「……一応聞いておくが……冗談か?」
「なんで冗談言わなきゃなんねェべ」
「「………」」
どうしよう…マジっぽい。
シノはそろそろとローを窺った。
冗談だよね?
ここ偉大なる航路(グランドライン)どころか、思いきり新世界だよね?
不安そうに見上げる瞳を見下ろしたローは、悲しい事にシノを安心させる言葉は持たなかった。
彼もまた、シノと同じ気持ちであるからだ。
「おい麦わら屋一味!!ちょっと来い!」
「どした?」
サンジの手配書の件もひと区切り落ち着いた頃、甲板から呼ばれて顔を出したルフィと仲間達もまた、信じたくない絶望を味わう事となる。
「ベポ君……」
会えずにいる兄貴分が、色んな意味で恋しくなった。