OP連載

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シノが臨時航海士になって6日後、シノは霧の深い海域を進む巨象を発見した。
まだまだ、霧が無かったとしても見えない程の遠くにだ。



「キャプテン、”ゾウ”いたよ」

「ああ」

「何だ〜?いたって…動物の象かァ?」

「島じゃなく?それとも海の上に象がいるのかしら」

「どんな象だよ」


ありえねー、とウソップが言うのを気にせず、シノはあっさりと「そう」とロビンに向かって頷いた。
ローが補足してやる。


「”ゾウ”というのは巨大な象の背に栄えた土地の名だ」

「「え〜〜〜〜っ?!!!」」


ルフィとウソップが大仰に驚き、聞いていた他の面々も目を見張っている。


「なんじゃそりゃ!!島じゃねェのか!」

「象は泳げんのか!?」

「…」


ルフィの言葉で、ロビンの脳内に海をジャブジャブと犬掻きで泳ぐ、楽しそうな象の映像が浮かんだ。
ちょっと可愛い、と少々ズレた感性のロビンは思う。
色々な方向からくるリアクションをさらっと無視したローは、シノに「あとどのくらいだ?」と聞いていた。
さすがに面倒なようだ。


「……ん、象のスピードがこのままで、船もこのままの速度なら……あと半日から1日くらいかな?」

「ってェこたァ…やっぱ動いてんだなその象は」


シノはフランキーを見て頷く。


「今そっぽ向いてるから追いかける形になってる」

「へー!!すっげェなァ〜〜!!”ゾウ”!!楽しみだなァ〜!!!なァ!その象ってどんくらいでけェんだ?山くらいか?」

「ん〜…まァそんな感じ」

「ほーーっ!!!」


ルフィの目が、山のような象を思い浮かべてキラキラと輝いている。
冒険心が刺激されたようだ。


「そんなにデケェ象かァ〜一体なに食ってんだろうなァ〜〜?」

「先に行ったナミ達……船ごと吸われて消化されてなきゃいいけど……」

「だから何でお前の想像はいちいち怖ェんだよ!!!」


ロビンのおかげで、ウソップは持ち前のネガティブ思考で涙目になっている。
象に乗りたくない病になりそうなウソップの不安をよそに、一行は翌日には巨象に追いついた。


巨象が肉眼で確認出来たあたりで、シノはムフーンと鼻で息を吐いて、高揚感溢れる顔で”エコーロケーション”を象の背に集中させた。
見るからにワクワクしているシノを、ロビンが微笑ましそうに見守っている。
ローはバルトロメオ達に上陸の準備と指示を出していた。
上手い事ルフィの名前を出して、上陸後の為の食糧まで提供してもらっている。



「―――………いた!!ベポ君!!!」



―――ベポ君!!!



「!!…シノ……!?」



くじらの森のベポに、久方ぶりの妹分の声が届いた。



********



サウザンドサニー号へと移り、上陸準備を整えたシノ達は、カン十郎の出した”昇り龍”…と言うには少々残念な絵の生き物、りゅーのすけに跨り、巨象の足を登っていた。
ツナギに着替え、ローの前にちょこんと跨ったシノはというと、背負ったリュックが大きすぎてローに嫌な顔されていた。
シノのリュックは、ローの物のおよそ1.5倍くらいはある。


「お前…何をそんなに入れてんだ」

「7割くらいはベポ君へのおみやげ」


えへっと照れるシノは、続けて「みんなのもちゃんとあるよ!」とフォローするが、ローが呆れているのはけしてクルー全体の土産が気がかりだからではない。
りゅーのすけに乗って上を目指す道すがら、シノはベポからの言伝など、わかった事からローに報告していく。



「ベポ君達…くじらの森っていう所から今は出られないんだって。だから来て欲しいって」

「わかった。だが何故だ?」

「ベポ君海賊になって戻ってきたから、身元引受人みたいな人の預かりになってるんだって。その人が森の主みたいだよ。詳しい事は後でキャプテンと一緒に話すって」


やっぱり不良になって帰ってきたと思われてるのかなァ…と、善良な白熊を心配していると、ルフィ達も仲間達の事が気に掛かっているようで、尋ねてきた。


「ナミ達の事はわかるか?どのへんにいんだろ?」

「ベポ君が麦わらの一味は”右腹(ウバラ)の森”だって言ってたよ」

「ふーん…森かーまあいいや!森行きゃ見つかんだろ!!」


いいのかそんなアバウトで。
シノは、てっきり右腹の森の位置くらいは聞かれると思っていた。
ベポの様子を思い出したシノの眉が、少しひそめられる。


(このゾウで…何かあったのかな…)


旧知のベポの調子が、彼の言いあぐねていたたくさんの事をシノに匂わせていた。
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