OP連載

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「ベポく〜〜〜ん!!!!」

「シノ〜〜〜〜!!!!」



互いの姿が見えるなり、涙を横に流し、両腕を広げて駆け寄ったシノとベポは、中間地点で勢いよくぶつかると、そのまま勢いを殺すように抱き合いながらくるくると回った。
そうしてシノを胸にへばりつけたベポは、今度はタンッと地面を蹴る。
目標はローだ。


「キャプテ〜〜〜ン!!!」

「うっ」

「ぐひゅっ」


感極まった白熊の勢いに、ローだけでなく挟まれたシノまで毛皮に呻いた。
後から、クルー達も続々と走ってくる。


「キャプテーン!!シノー!!」

「スゲーなードフラミンゴに勝ったなんて!!」

「いやァあれは麦わら屋が…」

「つもる話もあるんだ!!さァ森の奥へ!!」


促され、歩いて行くローを囲むクルー達。
シノも、ベポの胸からよじよじと肩に登って久しぶりの肩車でついていく。
シノのリュックはベポが背負ってくれていた。
最初は最後尾だったので気づかなかったが、森の奥、ハートの海賊団の住まう場所まで辿り着いた所で、誰かがそれを指差した。


「あれっシノお前背中…」

「あ!ほんとだ!」

「……」

「背中?」


と、シノが見えないベポが顔を上げる。
シノはベポの額をしばしもふもふしてから「刺青…」とポソポソと言った。


「えっ刺青!?シノが?」

「もしかしてキャプテンにやってもらったのか?」

「中々様になってるぜー!」

「……ありがと…」


スポブラのようなトップスに少々遮られつつも、シノの背中に描かれたハートの海賊団のシンボルは、見事にその存在を主張していた。
非常にショッキングな馴れ初めの刺青ではあるが、一度受け入れたからにはきちんと褒め言葉は受け取っておくシノだった。


木をくりぬいた家や、太い枝の上に建っている家、まるでどこもかしこも秘密基地のようなそこには、たくさんのミンク族達もいて、ベポ達の仲間だというロー達を歓迎してくれた。
彼らも皆、ベポ達のように負傷の跡があった。


「ベポ君…ケガ大丈夫?」

「…うん」

「話はそれか?」


ローの言葉に、ベポはこくりと大きく頷いた。
やがてベポ達の住まう家の中に入ると、わりと大きなリビングがあっという間に狭くなった。
20人以上が一同に会しているのだから仕方ない。
まずはローをソファに、その隣にシノを膝に乗せたベポ。
向かいにペンギン達が座ってしまうと、ジャンバールなどは大きな身体で膝を抱えて壁を背にし、他の面々も床に出窓にと、適当に散らばっていく。
その間、床に置いたリュックから、シノはいそいそと大きな瓶を取り出していた。


「はいベポ君お土産っ!」

「おれの?ありがとー!!」


大きなリュックの半分以上を占めていたブツの正体に、ベポはパアッと期待に胸を熱くした。
嬉しそうに「なんだろ?」と鼻をスンスンさせるベポに、シノは照れ笑いを浮かべながら中身を明かした。


「ふふっ実はそれ、ドレスローザのグリーンビットって島に住んでるジャイアントキラービーのはちみつなのです!!」

「はちみつ!こんなに?」

「うん!すごく大きな植物ばかりの島に育ってるから蜂も巨人並みなんだ」

「へー!」


目をキラキラさせたベポがしっかり閉められた蓋を開けると、黄金色より少し濃いブラウンのはちみつが部屋の明かりを反射してペカーッと輝いていた。
そこでシャチが「ベポばっかいーなー!」と言うと、シノは胸を張ってリュックから、はちみつの瓶の3分の1くらいの大きさの袋を出した。


「そう言うと思ってみんなのも」

「「「「おー!!!」」」」

「ケンカしないで好きなのとってね」

「あの社会不適合者の野生児が…お土産を…っぐずっ」

「ベポに比べて小さいけど……っずびっ」

「……シャチとペンギンはいらないね」

「「ああっ待て待て!嘘だから!」」


涙で前が見えねェ…!!と、袖で目元を隠していた2人に気分を害したシノが、2人の前から袋を遠ざける。
慌てて手を伸ばすシャチ達をよそに、ベポはさっそく手を突っ込んではちみつを舐めていた。


「!!!!っんまーーい!!」

「でしょ?私も初めて食べた時是非ベポ君にも食べさせてあげたいって思ったんだー」

「こんなにおいしいお土産ありがとう!!」

「どういたしまして!私はベポ君のその姿が見られただけで嬉しい…!」


はちみつの瓶に手を突っ込む熊といえば、シノにとっては世界的有名なロマンである。
勿論、喜ぶ兄貴分の笑顔はその上をいく。
ほう、と頬を染めて健気な事を言う妹分に感動したベポの黒い瞳は、そのまま融けてしまいそうなくらいに潤んでいる。
ローも興味を惹かれたのか、指ではちみつをひとすくいする。


「たしかに高級品だな」


品質に加え、巨人並みの蜂が蓄えていたとなると、正規の手順で市場に出回ったのなら、入手の困難さから値段はかなりのものになるだろう。
海賊の土産にしてはまあ相応しいスケールだ。
元手はおそらくゼロだが。


「まあそれはいい…おまえらも後にしろ。それより状況は」

「「はーい」」

「「「「へーい!」」」」


一足先にローと合流していたシノはともかく、応ずる仲間達の声はやはりどこか弾んでいて…まさかこの後、あんな悲惨な話をするとは思えない和やかな雰囲気だった。
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