OP連載

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「うちの管制官の読みじゃ、せいぜいあと半日。明日の朝から昼には再びジャックの船団がやって来る」




……と言ったはずだったのだが、




「クジラに登るぜよ」

「ここにいるのか雷ぞう!」



あの報せから、何故今クジラを登る事になっているかというと、原因は夜明けまで遡る。
ようやっとゾウを登りきり、辿り着いた侍、錦えもん達だ。
てっきり国が滅んだ原因との対面で事案になるかと思いきや、彼ら光月家一門とネコマムシ達は昔からの兄弟分で、雷ぞうも無事このゾウにいるというのだ。


「何が滅ぼうとも敵に”仲間”は売らんぜよ!!!」


と言った男前キュートなネコマムシにキュンとしてしまったのは、シノだけの秘密だ。
…と思っているのは本人だけで、頬を引き伸ばされる刑を執行する時のごとく何がしかを感じ取ったローの視線が一瞬シノを貫いたので、思わずビクついてしまったり何かしたが、さて置き。

その場にイヌアラシやミンク族達など、役者が揃っているのを時だと思ったネコマムシにより、ジャックの再来はいとも容易くゾウ全体に知れ渡った。
国全体が深手を負っているとはいえ、今度は不意打ちを迎え撃つアドバンテージがある。
これを活かさぬ手はない。
というわけで、ゾウ全体で迎え撃つ勤しんでいたはずが、何故かネコマムシ、イヌアラシを筆頭に侍達と麦わらの一味、ローとシノまでクジラを目指して登山?木登り?をしていた。
「こんな暢気でいいのかよ〜ォ?」とビビッていた某狙撃手が常識人に見えたのは、船長からの「忍者だぞ!」で「忍者ァ!!」と手のひらクルッとするほんの数秒間だけであった。
やはり彼も麦わらの一味なのだった。


「それに準備っつったって、シノがいりゃ来るタイミングわかんだろ?だったらいいじゃねーか!どうせおれ達計画とか準備とかって苦手だし」

「「「お前が言うなァ!!!!」」」

「あでぶっ!!」


麦わらの一味ビビリ3人組から漏れなく手を上げられたルフィと、彼に従う一味、それに侍達は言わずもがなであるが、そこに何故ローまでが加わったのかと言うと……まあ…シノにも原因が無きにしもあらずだった。



クジラの中に隠した雷ぞうに会いに行こう!と盛り上がる侍達、麦わらの一味を遠巻きにしていたロー達。
シノは、クジラの中から聞こえる泣き声とも呻き声ともつかぬ声を頼りに、反射的にその雷ぞうの所在を探った。
そして雷ぞうの縛り付けられているものに、シノは「あれ?」と思ったのだ。


(何だっけ…?どこかで……)


首をひねるシノに気づいたローに「何だ」と問われ、シノもまた、答えを見つけられないまま話す。


「……雷ぞうっぽいのがいるのを見つけたんだけど…ううん……」

「煮え切らねェな」

「雷ぞうに何かあったのでござるか!?――ふぶぼっ!」


家臣の一大事に耳ざといのは結構だが、シノの人見知りっぷりは、一度会っただけのよく知らない子供にもシビアだった。
何だったかな?と考え込むのをやめぬまま、飛び込んできた子供を見もせずひょいと避ける。
モモの助が顔面から地面に突っ込んだ。
それに気づいた一味や侍達、他のミンク族まで何となく視線が集まり、シノは(考え事をしてるのに〜!)とムッとしながら音波化した。
ローを盾に隠れても良かったのだが、いかんせん、360度誰かいるのであまり効果がなかったのだ。
しかし、憎きは見聞色。
ルフィなど、何事もなかったかのようにシノのいる所にバッチリ視線を合わせて「どしたんだ?」と首を傾げている。


「どうしたぜよ?」


素敵なあの人も言うので、シノは仕方無しに、ローとだけ話すつもりだった事を話した。


「んん〜…雷ぞうっていうのは元気に泣いてるんだけど」

「泣いておるのか!?」

「武士の風上にもおけぬ!」

「まあまあ、雷ぞうは忍者ゆえ」


ワノ国勢にルフィが「忍者は泣き虫なのか?」とちょっとがっかりした顔をするものの、モモの助が瞬時に「そんな事はないぞ!!」と反論する。
んな事ァどうでもいいローが「で?」と続きを促すと、まだ思い出せないシノは姿を現し、うんうんと唸りながら一生懸命説明した。


「何かね…雷ぞうが縛ってある箱?四角い…大きな…字が掘ってあるやつ……石版の正六面体みたいなの…あれ、どこかで見たような聞いたような……気がしたんだけど思い出せなくて……んー…」

「!娘…何故わかる?」

「イヌアラシは初めてか!シノはスゲーんだぞ!遠くの見えない場所も色々わかんだ!」

「うちのだぞ」


夜は寝ていたイヌアラシにとって、シノは初見の能力者。
このざっくり説明で「悪魔の実か」と納得するイヌアラシとは別に、何でお前が自慢げなんだという顔のローにも、ルフィは悪びれなく笑っている。


「便利な能力だ…敵側でなかった事は幸運だな…」


国民全員、命がけでしらばっくれた戦いも、ジャック側に彼女がいたとしたらそれだけで無意味だ。
仮定に過ぎないが、イヌアラシはこんな能力者があの時いなかった事に安堵した。

能力に話が逸れた彼らとは別に、シノの話に一番反応を見せていたのはロビンだ。


「それって…」

「まあ元気っぽいから心配な「まさか”歴史の本文(ポーネグリフ)”!?」そう!それっぽい!」


わースッキリー!となったシノだったが、正解を齎してくれたロビンの真剣な表情にすぐ首を傾げた。
いつだったか、ベポやローと何かの拍子に話していたやつだったと思うが、ロビンは何か知っているのだろうか。
ローを見上げてみると、こちらも何やら悪人面が2割増…


「に゛ゃっ!」

「おれ達も行くぞ」


頬を引っぱられたシノはローと一緒に、ポー…グリなんとかという、四角い箱を目指す事になってしまったのである。
さすがのシノも、ローが目の色変えた理由が忍者でない事くらいわかる。
なら、ベポ君は!ベポ君も!と手をバタバタさせるシノに対し、兄貴分は朗らかな笑顔で手を振った。


「いってらっしゃーい!おれ達迎撃準備しとくからー!」

「ごゆっくりー!」

「「「「ヒューヒュー!!」」」」


かわいく送り出してくれるベポ君は許す。
だが後で悪乗りする奴らは許さない。


「バカ!ジャックが来るんだゆっくりはねェだろ」

「!!それもそうだ!早く帰ってきてねー!」

「ジャックが来るまで水入らず楽しんでねー!!」


船長カップルに浮かれるハートの海賊団よ気づけ。
これ、デートじゃねェから。
麦わらとか色々いるから。


ツッコミがないまま、快く見送られたシノとローはクジラを登るのだった。
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