OP連載

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クジラを這うように伸びた蔓をやや急ぎ足で登り、尾に位置する入り口から降りた先にいた雷ぞうに、一部はものすごくがっかりした。
それでも忍者っぽくない忍者に集る男共の端で、ぼそっと分身の術を要求したローを、シノは二度見した。
キャプテンも男の子だったのだ。


赤い石の名はロードポーネグリフ。
”偉大なる航路(グランドライン)”の最終地点を示す鍵だった。
それも驚きだが、ロビンは…というより、ロビンだけがこの石の文字を解読できるらしい。
だからあんなに反応を示していたのだろうか。
シノはロビンの手配理由や出自を知らないので、正直オハラが解読云々もよくわかっていなかった。


「ほわァ……冒険ぽい…何か冒険ぽくなってきたよキャプテン!よくわかんないけど…!」


七武海とか四皇とか、陰謀めいたものばっかり関わってきた反動だろうか。
心がそわそわする。
子供でもないのに、不思議と心が高揚してくる。
皆、これを目指しているのか。
あるかもわからない”ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を求め、この過酷な海を生きているのか。
世に蔓延る海賊だって、大半は信じちゃいないのかもしれない。
シノだって別に、ある!とか信じているわけでもない。
そういう宝島や、夢物語みたいな事はありふれているから、あまり考えた事もなかった。
でも、何故だろう。
ただの物語が、現実味を帯びてくるこの感触は


「なんか…わくわくするね…!キャプテン!」


とっても浪漫がある。
よくもわかっていないくせ、子供のように目を輝かせるシノの頭が、タトゥーだらけの手にくしゃくしゃにされた。
髪型が崩れて「わっ!」となるシノには、帽子の下で弧を描いた唇は見えない。
かわりに、同盟相手の船長が「なー!!!!」とテンションMAXで同意した。
とはいえ世間知らずなシノなので「後でまたベポ君に教えてもらおっと!」とか考えている。
諜報活動や潜伏続きで、どちらかというスパイっぽい事ばかりしていた冒険初心者に、いきなりラストダンジョンの話は早すぎた。
何気に、夢もへったくれもない不憫な海賊生活を送っていたシノだった。

くしゃくしゃになった髪を指で梳いて直していると、話は最後の島『ラフテル』から、ワノ国へと移る。
何でも、このモモの助という子供の一族はこの大きな石を細工してきた石工であり、その文字も代々知識が継承されてきたのだという。
彼の父は伝説の海賊ロジャーのクルーであり、世界の秘密を知った人物でもあるらしく……何やかんやでカイドウに狙われていると。
彼自身は家臣らの命を救うために処刑されたようだが、カイドウはその秘密とやらの情報を引き出せないまま、今度はその子、家臣であるモモの助や錦えもん達に狙いを変えてきたらしい。
侍達の助力を求める声に一旦は断ったルフィも、モモの助という”頭目”に乞われて即答した。


「よくわかった!!手ェ組もう!!『同盟』だ!!
 カイドウの首はおれが貰うぞ!!!」

「かたじけのうござる!!かたじけのうござる!!」

「違うよ!!『がしっ』てやるやつだ『がしっ』て!!」


出した手に、泣いて縋るように額を寄せるモモの助に、ルフィは困ったように、怒ったように言う。
彼の人柄がよくあらわれているそれに、シノも知らず知らずのうちに笑顔になった。
これはもう、ハンコックちゃんへの近況報告レターに記すしかあるまい。
フィアンセが男前で大変結構。
ローを見上げると、怒りたいけど怒れない、そんな顔をしていた。


「たしかにこれが筋だ」

「おい”麦わら屋”おれへの筋はどうした」

「ん?いいだろ?」

「いいけどだ!!」

「ふふ…!」


やっぱり怒りきれてない。
耐え切れなかった笑いが、クスクスと漏れてしまう。


「よーーしおれ達は!!『四皇』カイドウをブッ飛ばす為の!!
 ”忍者海賊ミンク侍同盟”だ!!!」


「長ェな!!」

「忍者いるの?」

「「「「それはいるだろ!!!」」」」


「お前ら!!もう二度と頭を下げるな!!手もつくな!!
 『同盟』っていうのは友達の事だ!!!」

「違う!!」

「っふふっあはははっ!!」


もうだめだ。
大口上げて笑うシノをローが睨むも、笑いは止まらない。


しかし、こんな楽しい気分に水を差す連中が、ついに水平線のすぐ向こうまで迫っていた。
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