くろいぼうし(真田長編)

□].10/3幸せになろうか
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海原祭が終わってから、4日が経った金曜日の放課後、久しぶりに幸村、柳生を誘って部活に参加していた。

本当は蓮二も誘いたかったが、最近、受験に向けてなのか塾に通い出したらしく断られてしまった。



金曜日の今日のメニューはレギュラーミーティングと部員同士の練習試合だが、公式戦を特に控えている時期ではないので、レギュラーミーティングは行わず、最初から最後まで練習試合を行うようだ。



練習試合の組み合わせは決まっていないので、各自で自分の実力に合った相手に試合を申し込み、コートに入って試合する流れだ。
赤也は宿敵3人のうち2人の参戦で、かなりアドレナリンが分泌されている(興奮してる)ようである。



アップが終ると、赤也は俺と幸村の所に来て、ラケットをこちらに向けながら「数少ないチャンスなんだ。今日こそ、アンタら倒しますから。」と宣戦布告をして離れて行った。



とはいっても、俺たちはあくまで引退した身であるので、2年部員を優先に試合させ、全員が一通り1試合ずつ終ってから、コートに入ることにした。




柳生は、まだ試合をさせてもらえない1年部員をコートの端に集めて、ロブの指導をしている。
俺のスパルタ系の教え方と違って、柔軟な教え方だ。1年部員もナチュラルに懐いている。(教員というか指導員向きだな…あいつは…。)



先に赤也と幸村が試合をする。
赤也は目を真っ赤にして必死に試合してるのに、幸村はにこにこ笑いながら、どんなボールでも返球している。
何もさせない試合運びは相変わらずだ。


結局、幸村のワンサイド、6-0で試合は終わり、赤也はコートにラケットを叩きつけていた。



「くそっ、なんで勝てねーんだよ…。……はぁ……幸村先輩に勝てないなら、次は真田副ぶ……あ、真田先輩、試合しますよ。」




「お前の中では俺はまだ副部長なのだな。まぁ、試合はいいが、少しお前が休まないと不利だろう。別に俺は逃げも隠れもせん。十分休んでから来い。」




「ふふっ、そうだね。まずは休んで、少し気持ち落ち着けよ。冷静を欠いてる状態だといい試合はできないよ。」



幸村がそう諭すと、赤也は近くの階段に座り、ドリンクを飲みながら休憩をしていた。



「じゃあ俺も休憩しようっと。」




「お前はそんなに疲れているようには見えないのだが?」




「え、そんなことないよ。神の子といえど疲れるって。あ、真田。自販機に飲み物買いに行きたいから着いてきてよ。」




「それくらい一人で行ってこい。」



子どもじゃないんだから自分の欲しいものくらい一人で買ってこいと突き放す。



「えーやだー。ほら、病気が再発してまた倒れたら困るだろ。それに、真田といろいろ話したい事もあるんだって。」



そういうと、幸村は強引に俺の手を引いて、自販機の方面に歩き出した。



「……ったく。」



ここで腕を振りほどくと、後でイップスにされる気がしたので仕方なくついて行ってやることにした。
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