それでも君が好きだから


□松野一松が本格的に拗れた切っ掛けのお話 2
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 ヤバいな。これは。


 むしゃくしゃしていて、気のままに歩いていたらいつの間にか知らない公園にたどり着いていた。距離的にはそんなに遠くまで来た記憶は全くないけれど、俺にその公園は見覚えが無かった。
 どこにでもありそうな公園。そして、富士山に見立てられて作られた遊具。そういえば、カラ松はこんな遊具が好きだった気がする。子供の頃から、こんな遊具を見つけると必ずこの中に入って暫く出てこなかった気がする。出てきたと思ったらそれに登って、やっぱり降りて来なくなる。あの雷の日も、そうだった気がする。

 カラ松が、兄弟すら知らない謎の外国人の友人(だと、思いたい)と出掛けた事実にむしゃくしゃした俺は、気ままに街を歩いていた。いつもの猫の場所に行ったりして時間をつぶしていた。夕方になっても帰る気になれなくて、トド松にLINEで連絡してからまたフラフラと歩いて、気が付いたら此処だ。道に迷ったのかなと、振り返るけれど、いざとなったらケータイでどうとでもなると判断して再び歩き始めた訳だけれど……

 すれ違うって行く子供達が楽しそうに家を目指して掛けていく。そんな公園の中で、その山の遊具が異様に気になった俺はその遊具を覗き込んでみた。釜倉の様な形の遊具の中には、白いワンピースに空色のスパッツを穿いた幼女が膝を抱えて顔を伏せて座っていた。普段なら勿論虫をする。気づかなかったことにして立ち去る。けれど、何故かそれが出来なくて、俺は無意識に幼女に声をかけていた。

「―――…ねぇ、帰らないの?」
「……ほっといて」

 幼女は声を掛けられても顔を上げることは無かった。寧ろ、頑なに膝を抱く手の力を籠める。此処からは絶対に出ない。まるでそう言いたげだった。

「…子供が、こんな時間まで一人でいたら危ないんじゃない?」
「危なくない。もんだいない」
「その根拠は何処からくんの…」
「私には誰もなにもできないから」
「……は?」

 幼女はそういうと、ゆっくりと顔を上げた。そして気だるげに俺を見上げた。そこで大きく目を丸くする。まるで何かに驚いているような表情だった。

「……ふしぎ。はじめてみた」
「―――何を?」

 
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