それでも君が好きだから


□はじめまして、カラ松です
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 片づけをしてからスタジオを出た後、私はその二軒隣にあるアパートに入った。2階に建てのアパートで一番奥の角部屋。その部屋を実は借りている。2LDKのバス・トイレ別で各部屋にエアコンがついているのに家賃は四万弱だ。私以外の人達は此処に住むとすぐに彼女の霊障で出て行ってしまう。私?私は御覧の通りだ。

「ちゃんともとに戻してよ?」
《判ってるわよ。ねね、新刊ないの?》
「まだ出てないよ?」
《そっか〜…で、カラちゃんはなんで元気ないの?》
「……話したくない」
《はっは〜ん、一君ね?》
「……」

 見ての通り彼女と共同生活しています。私は基本的にここにはいない。ただ家以外の場所に私のサンクチュアリを保護したかっただけだしLIVE衣装も見られたくなかっただけ。それを話したら彼女は了承してくれたのだ。私がこの部屋を借りれば他に誰も来なくなる。彼女はこの部屋に居続けられるし、私は兄弟に知られなくてすむ。お互いの利害が一致したわけだ。

「意地悪で冷たいし、たまに暴力的なんだけどさ……しょうがないじゃん。弟だし…………好き、だし」

 皮肉で捻くれたところも可愛い。何より猫好き男子なんて私を萌殺す気か。猫、猫だよ猫。神が与えたもうた奇跡の生命、それが猫だよ。猫と一松のセットとか萌死ぬって!
 まぁ、つまり、私は大の猫好きです。そして弟の一松に恋をしてしまっています助けてください。

《可愛い〜。まぁ、せいぜいがんばんなさい。少年!》

 今ではレイ子さんは素になれる数人の一人だ。数人ていうか、三人しかいないけど。
 ちなみに、私の前世の時のスペックはそのままここでも生かされているらしい。だから幽霊と平気で話せるわけです。私には特に怖い存在ではないのだ、霊は。

「畜生、自分は棚に上げやがって」
《なに?態度が悪いと祟るわよ》
「その前に祓ってやろうか。線香持ったらすぐだぞ」

 前世の実家は霊媒師だった。無論私もそうだった。本業は違ったけど。つまりはやろうと思ったら今でも除霊は出来るのだ。そのことを知っているレイ子さんは綺麗な顔で綺麗に舌打ちする。でもすぐに笑顔で私にじゃれてくる。曰く、私が女なら好みだったそうだ。すんませんね、今は男です。

「……あれま、帰らなきゃ。終電なくなる」
《ここで寝れば?》
「それも良いけどね……」

 私はちらりと携帯を見る。LINEが入っている。兄弟からだ。

「ここを特定されたくないから帰る」
《そう。じゃあいつも通り留守番してるわ》
「うん。ありがとう」


 
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