ごった煮


□誕生日だからって以下略! 4
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 お陰でうちの四男は六つ子の中で三番目に料理が上手いのよ。と、弟自慢をしてくる。中学と言ったら、僕達はまだ相棒同士でつるむことが多かった時期だ。僕達と並行世界は、こうも違うのか。そう思いながら二人の後姿をボンヤリと眺めた。
 ソラはもう一人の僕に、デカパン博士の所で何をしてきたのかを聞いていた。もう一人の僕はそれを普通に答えている。手伝いをしていたと言えば、ソラは当たり前の様にもう一人の僕を褒めた。褒められた僕は嬉しそうに目元を染めている。そして、唐突にソラのこめかみに小さくキスをする。それに小さく飛び跳ねたソラは、目元を赤く染めながら上目遣いでもう一人の僕を睨んだ。そんなソラを、もう一人の僕は慈しむように見つめている。

 胸が、瞬間に騒めいた。と、同時に、脳内で二人が僕とクソ松に返還される。眩しい。瞬間に、そう思った。

 もう一人の僕と、もう一人のカラ松が。ふたりの関係が、羨ましいと感じた。


 あれ…?どうして僕は二人を羨ましく思うんだ。冷静に考えろよ。同性で、六つ子で、同じ顔で、兄弟で。世間からも世界からもアウトだろ。駄目だろ。幸せになんてなれない。誰も祝福なんてしない。不幸にしかならない。なのに、どうして――…


 どうして、胸が痛い…?なんで今、こんなにクソ松の顔が浮かぶ?アイツに、どうして逢いたくなるんだ?自分大好きなナルシストのサイコパスだろ。なんで、どうして。なんで……

「――…出来たぞ、兄貴」
「おー!!美味そう!!お前、本当イタリアンとフレンチ得意だよな」
「…ま、な」
「いただきます」

 グルグルと悩んでいたら、ソラ達が冷製パスタを持って居間に入ってくる。二人は美味しそうに冷製パスタに齧り付いていた。然程時間も経たずに完食した二人はさっきの僕と同じように「ご馳走様でした」と言った。ソラは、その言葉にまたお辞儀をして皿を下げた。
 二人に聞けば判るかと思って聞いてみたけれど、二人は首を傾げた。そして、それを今まで疑問に思ったこともなかったと言われた。物心がついたころからソラは飯を食べ終わった後、空になったお皿に向かってお辞儀をしていたと。
 何故か、僕はそのことが気になって仕方がなかった。


 夜。僕達は九人で銭湯に行った。そこでおそ松兄さんが唐突に『チ●コ当てクイズ』をやり始めた。長男と次男と四男が二人ずついるんだから面白いだろうと。その瞬間、ソラが顔を強張らせた。直後、僕達六つ子は違う意味で固まった。

「俺と一松は参加するけど、カラ松は駄目ね」
「えー、なんでー?」
「駄目なもんはだめー。長男ルールで決まってんの。お前も俺なら俺の言いたいこと判るだろ?」


 
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