ごった煮


□誕生日だからって以下略! 4
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 ニコニコと、もう一人のおそ松兄さんはソラを隠すようにおそ松兄さんの前に立った。チラリとソラを見れば気まずそうにしている。直感で、僕はソラはこの手の話が苦手なんだと理解した。その時だった。

「――ていうか、俺のカラ松のを、俺が見せる許可出すわけないでしょ」
「いちまぁあつ!!声が大きいかなぁあ?!」
「なんなら赤塚の中心で叫んでこようか?『松野カラ松は松野一松のものだから手を出すな』って」
「小さい規模で喜ぶべきか、お前の歪んだ認識を正すべきかどっちかなぁ?!」
「別に監禁しても良いけど」
「――真顔で言うの、やめないか?」
「マジだからね」
「――おそ松ぅうううぅぅぅぅぅうううううぅぅぅ?!」
「え?いや、その意見に関しては俺と一松は一致してるからお前の味方は今此処にいないよ?俺も俺のチョロ松監禁したいもん」
「ツッコみが足りない、トドー!!チョロー!!」

 さらりと、爆弾発言が聞こえた気がしたけれど、僕達の中で『クールでカッコイイ次男』のイメージだったソラが良い意味で崩れ始めた。
 それからは結局普通に風呂に入った。並んで帰り道を歩く。ふと気づくと、僕の隣にはクソ松がいた。別に、いつもツンケンする訳じゃないから良いかと思いながらスルーした。僕の前は並行世界のグラデ松が並んでいた。その前を速度松。僕達の後ろを末松が歩く。暫く歩いていると帰り道の中で一番暗い道につく。その瞬間、もう一人のおそ松兄さんともう一人の僕はソラに寄り添うように歩き始めた。不意に、ソラが脇道に目を向け、そのまま足を止めた。

「――カラ松?」
「…行くぞ、カラ松。ほら」
「………………………」

 目を見開いて、暗がりを見つめる。クソ松と僕はそれに釣られるように脇道に視線を向けた。喧嘩の後の後継が広がっていた。血だらけの男がうつ伏せに倒れている。クソ松は僕に黙って銭湯グッズを渡すと倒れている男の傍に寄った。そうなんだよな。此奴ってこういう奴だよ。こういつ奴をほっとけないの。偽善のかたまりのような奴。
 そう思いながら内心で舌打ちをする。その時、何かが落ちる音が聞こえた。その音に皆の視線が集まる。ソラが、銭湯グッズをおとしていた。浅く肩で呼吸を繰り返していた。そんなソラの様子に、心配そうにおそ松兄さんがソラの名前を呼んだ。

「――大丈夫か、ソラ?」

 名前を呼ばれたソラは、声に成らない声を上げた。そしてそのまま走り出して去っていった。それを、すぐにもう一人の僕が追いかけて行った。もう一人のおそ松兄さんに銭湯グッズを押し付けるように渡して。

「――…ねぇ、カラくん。その人大丈夫そう?」
「あ、ああ。自力でどうにか出来るそうだ」
「なら、帰ろうぜ」
「え?!二人はほっとくのかよ!?」

 
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