それでも君が『妹松さん』


□仕事より妹。仕事より兄さん
1ページ/4ページ



 短い人生を終えて、新しく転生したらアニメの世界だった。夢みたいな現実は、私を開き直らせるには十分だった。ましてやそのアニメの世界は『おそ松さん』だ。私、その二つ下の妹なんだぜ。どう思う?

「あー、働きたくなーい」
「黙って、クソ兄さん。ほら、ハロワ行くよ?」
「やーだー、行きたくないー!!」

 働きたくないと駄々を捏ねているのが我が家の長男サマ・松野おそ松だ。アニメでは笑っていられたけれど、実兄となると話は別だ。殺意しか抱かない。今も子供のようにヤダヤダと駄々を捏ね続けている。

「…兄さん、考え方を変えようか」
「えー、無理だよー」
「私とお出かけ&チョロ兄さんとデートって考えたら?」

 私はコソコソと小さく耳打ちした。おそ松は数回瞬きをしたのち、コンマで準備を終えて意気揚々と居間に向かった。

「…え?あれ?!松李、どうやったの?あのグータラ兄さん、意気揚々と玄関に行ったけど」
「あ、チョロ兄さん。うん、存外、おそ兄さんは扱いやすいんだよ」

 そう、コツとツボさえ抑えれば簡単だ。


 大好きな妹と大好きな人を餌に釣り上げれば簡単に引っかかる。


「チョロ兄さん、早くいこ?私は別にバイト決まってるから行く意味あるか判らないけど」
「あ、待ってね。今荷物を確認するから…よし、おっけぃっと。それと松李もちゃんと行かなきゃ。バイトなんて、いつ首を切られるか判らないでしょ?」
「えー…ダイジョブだよー」
「…松李、おそ松兄さんみたいなことやらないの。ほら、行こう?僕とお出かけだって思えば良いだろ?」
「……………ソウデスネ」
「?」

 なんてゆうデジャブ。まさかチョロ松と思考回路がリンクしてしまった。血の繋がりって怖い…

 そんなこんなで、私達は兄妹皆で仲良くハロワに向かう事になった。


 道中、
猫を見つけて一松と追い掛けたり
十四松とタンポポ早づみ競争したり
トド松と自撮り合いっこしたり
カラ松をスルーしたり
おそ松とじゃんけんしながら進んでたら

 チョロ松に叱られた。酷い。私に罪はない。余りにもチョロ松の説教がウザいので、私はニヤリと笑って(チョロ松には見えてない。皆は見てたけど)黙らせるための奥の手を使った。


「それに、松李は女の子なんだから…「…ごめんなさい、次からは気を付けるから…松李を嫌いにならないで、チョロ松お兄ちゃん…」


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ