黄昏に君を逢う


□見える絆と見えない絆
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 イチが来て、数年が経った。ソラは格段に美しくなり、今では遠方様々な神々が彼女を一目見ようと押しかけてくるほどだった。
 神が来るとその土地は栄えていく。土地が栄えれば人間は強欲になっていく。神羽の里の周りには大小様々な町が出来た。それでも、里のモノ達は決して神羽神社に人間を行かせなかった。神羽神社に参拝していいのは十三祝いを迎える前の子供だけ。神羽神社はいつしか子供の守り神として奉られるようになっていった。

「――天兄様、イチは?」
「多分、猫の集会じゃない?」
「そう…」

 ソラはイチを気に入っていた。見た目も精神的にも年齢が近いからだろう。二人は意気投合するのに時間は掛からなかった。今では普通に友人として山の中を遊びに駆け回っている。天狐は、一度イチとソラに互いに恋愛感情はないのかと聞いてみたことがある。それに対する二人の返事はNoだった。

 ソラは今でも天神様を愛していると言った。イチは確かに彼の転生者だが彼ではない。だからそういう感情は感じないと言った。
 イチは妹や姉の様にしか感じないと言った。ソラに関する記憶は確かにある。けれどそれは過去の自分であり今ではない。そう言った。

 ソラとイチは似ていた。物事の捉え方も見方も。だからこそ、天狐はイチに学を教えることにした。自分が使う呪いは術をイチに教えようと思った。なんだかんだで二人はよく一緒にいる。だからこそ、何かあった時の為にイチに力を与えようと思ったのだ。幸い、イチにはその素質があった。



 時が流れるのは早い。あれからどれほどの時が過ぎただろうが。人間の王は三回は代替わりした。それぐらいには時間が過ぎている。

「――…ナニコレ」
「え?ついにカラに隠し子?」
「酷い、兄様。信じてたのに」
「ろくでなしー、ひとでなしー、すけこましー」
「ち・が・う!!」

 カラは、何故かカラス天狗の里に呼び出されていて暫く神羽神社に帰ってこなかった。久方ぶりに帰って来たと思ったらカラス天狗の少年を連れてきたのだ。

 
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