それでも君が好きだから


□泣き虫だった
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 夕日に反射して、キラキラ。宝石みたいにかがいて落ちてく。ぼくはそれを取りたくて、宝物にしたくて手を伸ばした。でも手が濡れるだけだった。

「だいじょうぶ?カラ松兄さん?」

 兄さんはうつむいて泣いていた。だからぼくがいることにきづいてなかった。
 手を伸ばして、キラキラした宝石……兄さんの涙を拭いてあげるとびっくりしたのか肩が大きく揺れた。ゆっくり顔を上げたカラ松兄さんの大きな目に、いっぱいの涙が溜まってて目がキラキラしてた。

「…いち、まつ……」

 耳をふさいで聞こえない様にしてた兄さんは、瞬きを大きく繰り返した。途端に涙がまたキラキラと零れていく。窓の向こうは真っ赤な夕焼け空。でも近くで真っ黒い雲が大きな音を鳴らしてた。それが鳴るたびにカラ松兄さんは怯えたように耳を抑えてうずくまる。そんな姿は見たことがなくてしんせんだった。かわいい。そう思った。

「こわいの?」

 頭をに触れて撫でると、カラ松兄さんが小さくうなずいた。ぼくは兄さんに笑ってほしくて兄さんを抱き締めた。

「ぼくがいるよ…カラ松兄さん」

 ぼくがそういうと、カラ松兄さんは女の子みたいに泣きじゃくりながらぼくに抱き着いてきた。ぼくはそんな兄さんに、なぜかとってもまんぞくした。


 カラ松兄さん。皆の兄さんで、おそ松兄さんの弟。優しくて強い兄さん。


 ぼくのうでで、泣いてる、カラ松兄さん。
 泣いてる兄さんは



 ぼ く だ け の モ ノ だ 。








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「………………ゆめか」

 俺はゆっくりと体を起こしてのんびりと周りを見た。居間には誰もいなかった。皆どこかに出かけたらしい。たぶん、ハロワには行ってないはずだ。行ったのはチョロ松兄さんだけだろう。……え?一人称が違う?そりゃ、二度目からわざわざ猫被る必要ないからね。素でやるに決まってるでしょ。面倒くさい。
 そう、猫に餌をあげ終わって、ある程度遊んでから家に戻って、面倒だから寝てたんだ。カラ松兄さんだけの写真のフォルダーを見ながら。だからあんな夢を見たのか……懐かしい。

「……あ」

 気まぐれに窓を見ると、空は青いのに、ちらほらと黒い雲が見える。あの日の様に黒い雲だ。心なしか空気も重かった。これは、ふるかもしれない。そう思った俺は重い体を吐いた息と共に動かした。洗濯物を取り込まないとチョロ松兄さんが煩そうだったからだ。
 洗濯物を取り込んで、適当に畳んでいると玄関が開く音がした。ついでに声も。声はカラ松で、それは電話の様だった。

「…はい、それは問題ないですけど……でも大丈夫なんですか?それだとステージ、回りませんよ。さすがに俺一人でステージ回すのは……一日二日なら良いですけど、三日続けて俺だけって―――……その根拠はどこから来るんですか」

 ステージ?俺一人?……なんのことだ?

 
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