それでも君が好きだから


□交わらない、反対色
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 俺達は近所でも有名な六子の兄弟だ。
 長男は俺、松野おそ松。六人の絶対的リーダーで喧嘩も負けない。唯一互角なのは華奢な見た目に反してかなり怪力のカラ松ぐらいだ。でも自分からは喧嘩をしようとしないし、基本、自分の中のルールから外れなければ傍観するスタイルの人間だ。兄弟喧嘩も、獲物さえ持たなければ放置する。
 カラ松はもちろん弟なので男だ。以外にフェミニストで女子におモテになるが本人に自覚がない。だから告白もされた自覚がない奴だ。料理が以外に美味い。母さんと並んで俺達の夕飯を作ってくれる。洗濯も三男のチョロ松とよく一緒にやっている。家事は嫌いじゃないらしい。よかったな、一松。お前将来は安泰だよ。

 実は、この次男。最近やっと想い人と想いが交わることが出来た。相手は四男の一松だ。此処まで長かった。非常に長かった。俺が高校の時、此奴と殴り合いの喧嘩をしたんだけど、それをきっかけにカミングアウトされたんだよなー。

  『…一松が好きなんだ』って。

 
 一瞬耳を疑ったけど、俺はそれを否定はしなかった。理由はカラ松が特殊だったからだ。
 俺は特にそういうスピリチャル的なことは信じてないんだけど(いや、良い結果しか信じないけど)カラ松には前世の記憶があるらしい。しかもそれはかなり自我の意識に近く、俺達を兄弟として見ることが出来ないんだと言われたことがある。まぁ、俺が拳で聞き出しんたんだけど、この話は長くなるのでまたの機会ということに。
 話を戻すと、自我に近い前世の記憶では、カラ松は女だったらしい。だから恋愛対象が女になることは一生無いとカミングアウトされたわけだ。で、一松に恋してしまったことも。俺はこの話を聞いて、しょうがないと思った。
 カラ松は、要は根っこが女なんだ。女目線で物事をとらえている。だから下ネタを振ると恥ずかしそうにするし、女子力が高い。俺は兄として受け入れることにしたわけだ。いや、俺が受け入れないと、たぶん、カラ松は壊れていたと思う。だって彼奴、自分から喧嘩しない筈なのに、あの頃は本当に見境なく喧嘩していたから……

 この頃になって、俺はカラ松のそういった愚痴を聞く様になっていた。一松が可愛い、どうしようとか。今日は一松が微笑んでくれたとか。一松がかっこいいとか、ハッキリ言えば、ウザかった。いや、もう、ウザいの通り越してイタい子になっていた。でも、そんなカラ松に安心した。抱え込んで壊れるぐらいなら、いくらでも俺がはけ口になってやる。そう、あの日に決めたから。


  

 
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