それでも君が好きだから


□紅緋の心 深紅の心
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 喧嘩をして、振り返ればいつもカラ松を見るチョロ松がいた。そんなアイツの気を引きたくて、俺はどんどん喧嘩をした。いつの間に周りに敵がいなくなるぐらい。
 そうなったら、チョロ松は喧嘩をしなくなった。引きこもろうとする一松を無理やり引きずって一緒に学校に行った。

 俺の世界から、チョロ松がいなくなった。
 俺は灰色の世界で、何をしてもつまらなった。

 どうしてお前は俺を見ないんだよ。どうしてカラ松ばっかり見るんだよ。俺は長男で、皆の兄ちゃんで……

 あぁ、そっか。俺、チョロ松が好きなんだ。チョロ松の一番になりたかったんだ。喧嘩でも、なんでも…チョロ松にカッコいいとこ見せたかったんだ。


 でもさ、チョロ松、お前、俺を見ないよな。いつもいつだってカラ松を視線で追うよな。カラ松が好きなのか?

 成績優秀で喧嘩が出来て家事が得意。
 そりゃ当たり前か……


 俺の取柄なんて、喧嘩だけだ。何もない。
 こんな男、好きになんかなる訳ないよな。


 でもさ、好きなんだよ。


 どうしようもないぐらい、好きなんだ。


 俺を見なくてもいい、気づかなくていい。


 つらいなら、慰めてやるよ。
 カラ松にされたかったこと、代わりにやってるよ。





 チョロ松、だから、お願い―――



「俺から、離れないでくれ…」





::::::::::



「…悪いんだけど、布団引いてやってくんない?一松」
「―――…気付いてたのかよ」
「えぇ、まぁ。おそ松がいるのも気づいてるぞ。二人ともお帰り」

 カラ松は小さく笑う。腕の中にはチョロ松が目を赤く腫らして眠っていた。泣きつかれたんだろうと頭では理解しているけど、俺は動けなかった。そんな俺を尻目に一松が二階に上がっていった。

「…言ったのか、そいつ」
「いんや。俺がただ謝った」
「……なんだそれ」
「どの言葉にも、気持ちにも…俺は謝ることしかできないからな」
「……気付いてたのか、チョロ松のこと」

 カラ松は、俺の質問に苦笑しながら頷いた。
 いつから、は、聞かないでやった。たぶん聞いても此奴は濁すと思う。俺はただ、チョロ松を見ていた。

「……俺は、どうあったって一松が好きで…それはずっとこの先も変わらないから……」

 それなら、早いうちに終わらせてやれば良かったのに。なんて、此奴を責めることはできなかった。
 そんなことをすれば、チョロ松はきっとこの家を出ただろうし、そうしたら俺はきっと手が付けられないぐらい荒れただろう。


 
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