それでも君が好きだから


□泣かない人
1ページ/5ページ



 僕は十四松。おそ松兄さんとカラ松兄さんからは、よく『天使』とか言われる。トッティーも僕を可愛いとよく言って頭を撫でてくれる。チョロ松兄さんはよくお菓子を買ってくれる。一松兄さんは大好きな野球に付き合ってくれる。皆僕に優しい。僕は今のままで良いって言ってくれる。
 でも、カラ松兄さんは、ちょっと違う。

「十四松ー?何してるんだ?」
「お兄ちゃんと遊ぶかー?」
「わーい!!何して遊ぶ?野球?」

 僕達は小学校までは全部お揃いだった。それが中学に上がってから、いつの間にかお揃いでも色違いで持つようになってた。それを、カラ松兄さんは、遠い目でよく見ることが多くなってた。
 カラ松兄さんは、一松兄さんの次によく遊んでくれる。僕が笑いかけると、笑ってくれる。だから、僕はカラ松兄さんの前ではいつも笑うように心がけてた。

 カラ松兄さんは、いつも遠くから僕たちを見てた。僕は、もっと近くに来てほしかった。どうしたら、兄さんは近くに来てくれるかな。野球をしたらもっと一緒にいてくれるかな。
 いっぱい、色々、試した。

「三人で野球ってのもな。たまにはボーリング行く?」
「どうする?十四。ボーリングする?」
「うん!!いきマッスル!!ハッスル!!」
「決まり。じゃあ行こう。たまには三人で、な?」

 おそ松兄さんは、気付くとカラ松兄さんと一緒にいることが多かった。付き合いやすいのかなって思ったけど、カラ松兄さんを見るおそ松兄さんの目は、どこかイライラしてるようにも見えたから二人きりにするのが心配だった。でも、僕達六子の中で一番仲が良いコンビって言ったら皆絶対に二人を言うと思う。
 おそ松兄さんとカラ松兄さんはそれくらい、一緒にいた。




「オー、上手いな、おそ松。意外だ」
「だっろー?俺って何でも出来ちゃうからね。なんてったってレジェンドですから……ねっ!!……と」
「はいはい。陛下はすごいですねー……って、マジかよ?!ターキーじゃん!!」

 ボーリングはあまりやらないけど、結構楽しくて面白かった。おそ松兄さんがすごくうまくて、カラ松兄さんが下手だった。僕はなれるまでが大変だったけど、慣れたらおそ松兄さんに勝ったりできた。

「…よし!!カラ松、ジュース買ってきて」
「なんで俺が」
「ドベだ・か・ら」
「………」
「僕行くよ、おそ松兄さん!!」
「ん?十四松が行くのか?じゃあ、おつりは小遣いな」
「マジっすか!?やったー!!ありがとう、おそ松兄さん!!」

 なんとなく、その方が良い気がしたんだ。おそ松兄さんはカラ松兄さんと話がしたそうに見えたから。カラ松兄さんが一度断るのは判ってたし、僕もそう思ったから。
 どうして僕たちを、時々、他人を見るみたいに見るのかって…気になってたから。



 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ