それでも君が好きだから


□一松の胸キュン☆大作戦!! 1
1ページ/5ページ



 ことの始まりは、六人でテレビを見ていた時だった。例の歌番組で、カラ松が上機嫌に鼻歌を歌いながら見入っていた。体を揺らしながら『トリセツ』を、原キーで裏声を使わずに鼻歌するカラ松に皆がテレビではなくてカラ松に聞き耳を立てていた。

(…え、カラ松兄さんこの音出るの!?)
(ウワー……普通に上手いじゃん)
(ジャニーズだけじゃないんだ…)
(兄さん、可愛い!!体揺れてるー!!)
(良い顔しちゃって、まぁ…)
(うーん、やっぱり高いなぁ、西野さんの歌は)

 六人それぞれの心の声に俺の膝の上のエスパーニャンコが楽しそうに見ている。目が合ったので煮干しを分けてあげた。すると、スマホで何かを調べていたカラ松が不意に俺を見た。目が合うと、ニコッと微笑まれる。一瞬、ドキッと心臓が跳ねた。

「♪これからもどうぞよろしくな♪」
「え?」
「♪こんな俺だからお前じゃなきゃもうダメで♪」
「………」
「♪もちろん一生面倒見るぜ♪
 ♪永久保証の俺だから♪」
「?!////////」

 テレビでは本人が歌唱しているが、すぐ隣で、その男版の歌詞にアレンジされて見つめられながら歌われた俺は思わず顔が赤くなっていくのに耐えられずにマスクを上に上げて誤魔化した。すると後ろからトド松がテンション高めに絡んできた。

「兄さん、何それー!!今のかっこかわいすぎでしょー!!」
「あはは、なんか急にやってみたくなった」

 恥ずかしそうにしながらカラ松は手鏡で自分の顔を覗き込んだ。どうやら肌を確認しているらしい。そういえば、例のLIVEはどうなったのだろうか。俺はそれを思い出して、カラ松を見つめた。

「そういえば、LIVEは?終わったの?」
「え?いや、まだ。セトリに悩んでてさー…俺以外の出演者に被らない様にしたいから、今回はジャニ推しにしようかと思うんだけど、そもそも、俺、KinKiと滝翼ぐらいしかライブで出来るクオリティー持ってないんだよな…そうなると一人でデュオやるのは、ねぇ?」

 俺の問いに、割かし本気で悩んでいるらしいカラ松が唸りながらスマホを弄り始めた。セトリの候補をいくつかピックアップしているらしい。「でもボカロもやりたーい!!」と叫び始めている。

「…LIVEって、なに?一松兄さん」
「カラ松が、今度出るんだって」
「えー?!何それ、お兄ちゃん初耳なんですけどー?!」
「ちょ…カラ松兄さん、どういう事!?」
「なになに?!祭?祭っすか!?」
「一松ー?!皆の前で言うなよー!?」

 皆には内緒にしていたかったカラ松は頭を抱えて絶叫した。おそ松兄さんが詳細を聞きだすために十四松にプロレス技をかける様に命令し、チョロ松兄さんはくすぐる準備を始めている。トッティーは動画を撮影し始めていた。

 別に、ちょっと、ときめいてしまったから…その仕返しっていうわけじゃあ…ないから。


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ