ごった煮


□誕生日だからって平和に過ごせる筈がない
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 想いを通じ合わせてから初めての誕生日を来週迎える訳ですが、俺は今デカパン博士の所に来ている。博士に研究所の片づけを頼まれたからだ。小遣いもくれるっていうし、一松の誕生日プレゼントをもう少し豪華に出来るかもと思って了承したんだけれど……まさかあんな目に遭うなんて思いもしなかった。




「――…あれ?さっきこんな扉あったっけ?」
「おーい、カラ松?どうかしたの?」

 俺の後ろからひょいっと顔を覗かせたのはおそ松だ。家で暇を持て余していたから手伝わせにそのまま引きずってきたけど、此奴は基本研究所に来てもダラダラとしながら博士の発明で遊んでるだけだった。それを尻目に言われた荷物を所定の場所に置いていく作業を続けていた訳だけれど、さっきは確かになかった扉が目の前にあるので
其処に気がいってしまった。
 それを説明するとおそ松は面白そうだから開けてみようと言ってきた。いや、此処デカパン博士の研究所ですから何があっても可笑しくないだろ。嫌だよ、開けるの。

「そんな目で見るなよー。ちょっと開けるだけじゃん」
「あ、おい!!勝手に開けるな?!」

 おそ松はいつものノリで簡単に開けてしまう。けれど、ドアに広がるのは真っ暗な暗闇だけだった。俺、一応暗いとこが苦手だからちょっと背筋に悪寒が走ってしまう。けれどこのおかん悪寒は今思えば、これから俺の身に降りかかる災厄を予感していたのかもしれない。

「なーんだ。普通の倉庫じゃん」
「へ?どこが普通なんだよ、真っ暗じゃん」
「は?何言ってんの?」

 俺には、真っ暗闇に見える。けれど、おそ松にはただの倉庫に見えると言われた。からかっているのかと構えたけれど、そうでもなくて本気らしい。変だなーと思ってその部屋を身を乗り出して覗いてみることにした。

「――え?」
「――カラ松?!」

 足を踏み入れた訳じゃない。覗き込んだだけだ。それなのに俺の体はグラリと傾いてその暗闇の中に落ちていった。俺の視界にはゆっくりとおそ松が手を伸ばすのが映る。まるでスローモーションの様にゆっくりに見えた。
 何、これ。落ちる―――――…

 屋内ではありえない現象。俺は、まるで不思議の国のアリスの様に真っ逆さまに落ちていった。
 まって、ありえない。どうしよう。どうしたら良い?視界には、俺が落ちたところが小さな光となって見えた。

「―――…っ…流転!!一松を護って!!いざって時は、おそ松を主人にして皆を護って!!」

 僅かに過ったのは、もしかしたらこのまま俺は帰れないかもしれないという仮説。そうなると俺が一松にかけた『蓋』が開いてしまう。そうなったら一松は何の備えも無しに行き成り心霊関係に巻き込まれてしまう。それだけは避けたくて、俺は自分の式神を放った。本来、俺は――『私』はカラ松じゃない。霊能力を持ったただの日本人女性だ。『私』の生を終えて転生したら、何故か『カラ松』として六つ子に産まれたんだ。その影響かは知らないけれど、『私』のスペックは六等分されて本来なら備わるっていない筈の霊能力を彼らに与えてしまっている。この力は良いことばかりを連れては来ない。自分で制御できなければ不幸になってしまう。特に一松とチョロ松。この二人は俺かおそ松が傍に居ないとすぐに霊に取り憑かれてしまう。
 流転は、『私』が幼い時に式神にした虎神の名前だ。強い霊や念を祓う時にいつも手伝ってくれる、俺の味方。どうなるか判らない以上、流転を一松に憑かせていた方が良い。そう判断した俺の咄嗟の判断が今にして思えばグッジョブと言いたい。お陰て本当の意味で独りになることは無かったのだから。

 
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