黄昏に君を逢う


□見える絆と見えない絆
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「翁の孫だ」
「はじめまして!!十四でッす!!」

 その少年は珍しい名前をしていた。けれど、カラを見れば嫌そうな顔をしている。聞けば、あれは名前ではなくただの番号らしい。少年は翁の十四番目の孫であり、そして異端であるために迫害を受けていたようだった。今までずっと両親が彼を庇い続けていたが、先日、亡くなったという。そしてそのまま里を追い出されたと。

「…夢枕にこの子の両親が出てきてな。迎えに行っていた」
「――ふうん…」
「それじゃあ、十四はイチの弟になるね」
「は?」
「名前も丁度数字繋がりだし、いいんじゃね?」
「じゃあ、十四の面倒は空狐とイチが見るということで」
「私も一緒に遊ぶ―!!」
「弟が増えてよかったね、姫」

 白い翼をキラキラした目で見つめるソラに、狸も天狐も満足そうだった。結局のところ、彼女が満足してくれればそれでいいのだ。元来、彼女は寂しがり屋だ。たとえ美しい少女に成長しても中身は変わらない。いつまでも穢れなく美しい女神なのだ。


 こうして、神羽神社は賑やかなになっていった。


 十四と名付けられた白い翼のカラス天狗が人間でいえば七歳ごろを迎えたころだった。神羽神社に人間の少年が参拝にやってきた。イチはどうせ自分のことは見えていないだろうと思っていたので境内でその少年を見つめていた。少年は、どことなく自分達に似ていた。質の良い着物を着ている。きっとどこぞの貴族だろう。そう思いながら気だるげに欠伸をする。今日は暑い。こうも暑いと何もする気が起きない。そう思いながら空を仰ぐ。楽しそうに十四が空を飛んでいた。羽根が一枚落ちてくる。羽根は少年の足元に落ちた。少年はそれを何気なしに拾って空を仰ぎ見る。その視線は完璧に十四を見ていた。

(…あれ?此奴まさか、見えてる?)

 今まで貴族の子供や里の子供達が参拝にくることはあった。けれど彼の様に見えているかもしれない人の子は初めてだった。イチは興味本位で少年に声をかけてみる。少年は初めは何も反応しなかったけれど、逆にそれが確信に変わった。

「――天狐兄さんが言ってた、鬼目の子?」

 そう声を掛ければ、少年の肩が大きく跳ねた。

 
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