この手はいつだって


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 神が『愛』と云うもの説くと、反吐が出る。他の人間が説いてもただの戯言に聞こえる。それでも彼奴が説くと、素直に聞くことが出来た。理解は、結局出来なかったけど……

 僕達三人は三つ子だ。この世界が三つに分かれた頃から、もう既に存在している。今じゃ魔界と呼ばれている場所が、僕らがいる場所。でも、別に僕達三人には関係なかった。今の魔界が、今の形で機能しているのは、僕達の後に生まれた『魔王』が魔界を統治したからだ。多分、本気を出せば僕達三人で魔界は統一出来ただろう。でも、やらなかった。理由は一つだけ。面倒だ。くくられるのも代表にされるのも面倒だった。自由気ままに暮らせれば何でもよかったのだ。
 それでも、天界の奴らにはよく喧嘩を売られる。別に僕たちは、天界も人間界もどうでもいい。楽しく自由に暮らせればそれでいいんだ。たとえ周りが僕らを『三魔神』と恐れていても、僕達には関係なかった。

 ある日、僕は人間界でヘマをした。怪我をして、意識を飛ばしていた。その時に思ったけど、どうやら僕は死ねないらしい。多分、兄さんと弟もそうだと思う。そう思ったら、なんだかすべてがどうでも良くなった。
 無限にずっと生き続けるなんて、一番の拷問だと、思った。
 そう思いながら、意識を飛ばしたことは覚えていた。でも、目を覚ますと古ぼけた教会のベッドの上で寝てた。僕達ぐらいになると教会にいても普通になる。他の悪魔は入れなくても、少し怠いぐらいでなんともない。そんな僕を運んで手当したのが……彼奴だった。
 イタい奴だった。無意味な自信にあふれていて、言動の全てがイタい。態々格好つけて遠回しにしか話さない。でも、それでもすごく優しくて、皆に慕われていた。

 慕われて当然だった。だって彼奴は、人の姿をした……天使だったのだから。


 そして、そいつはもういない。僕を助けたせいで、僕のせいで死んだのだから。僕の目の前で、訳の分からないことを言って、雷に撃たれて塵になって……消えた。僕の目の前で。

 その日から、僕はなんとなく魔界に帰っていない。


 彼奴が死んだときに唯一遺ったものがある。クロスのピアスだ。気が付いたら、僕はそれをつけていた。彼奴は両方していた筈なのに、片方しか遺っていなかった。だから、僕は片耳にこのピアスをつけている。暇で、教会の、彼奴の部屋に行って彼奴の神父服を着けて、教会で過ごすようになった。特に何もしない。でも、この身なりのせいで村人が皆僕を神父だと勘違いしてやってくる。僕は、神父の振りをするようになっていた。
 僕の首を狙ってやってくる悪魔を叩きのめしたりしたら、いつの間にか評判な神父になっていた。

「は〜あーい!!元気か、一松。俺だよ、おそ松お兄ちゃんでーすっ!!」
「…毎日来るね、兄さん」
「まぁね、お前が心配だから。だって百年は帰ってないよ?」
「……そう、まだ百年しか経ってないんだ」

 
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