この手はいつだって
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「君たち〜?宿を探してた旅の神父ってのは」
「…?あぁ、そうだ。見るところ、どうやら貴方も神父の様だ。名前を聞いても良いだろうか」
「―――――――あら、意外な反応」
「……」
「?………あぁ、すまない。こちらから名乗るべきだったな。俺はカラ松で、こっちが弟のチョロ松だ」
「弟〜???はー……あんたもやるね」
「黙れ、おそ松」
おそ松と呼ばれた神父は、何故か俺達にとても顔がよく似ていた。おそ松の腕を思い切り振り払ったチョロ松は、そのままおそ松と俺の間に身を割り込んで入れるとおそ松を睨みつけてしまう。そんあチョロ松の失礼な態度に、どこか楽しそうにおそ松は微笑んだ。友人、なのだろうか……?
「二人は、知り合いか?」
「………そんなわけ「そうなのよー、いやね、昔チョロちゃんと文通してたんだけどさー。いろいろあって怒らせちゃって、文通が終わっちゃったんだよねー」
人好きのする笑顔で、シスターと翌日の約束をして帰る子供達に手を振りながら、おそ松は俺を見上げた。少しだけ俺の方が身長が高いらしい。
「どうも、俺、おそ松でーす。そこの外れの教会で”弟”と神父をしてるからさ、力になるよ〜?泊まるとこ、探してるんでしょ?」
「そうか!助かる。まさにその通りだ。甘えても良いだろうか」
「オッケーオッケー。ま、そういうことだから、今はお互いに――――休戦とイこうぜ……メ・ガ・ミ・さ・ま♪」
どうやらおそ松は、過去に本気でチョロ松を怒らせたことがあるらしい。そしてそれはチョロ松にも言えるようだった。二人の空気がピリピリと痛かった。
「………ね、カラ松神父。そのピアスどこで買ったの?その彩色は珍しいね」
「ん?これか?よくわからないんだ。教会の前で拾われた時から、ずっと握りしめていたらしい」
俺の右耳のクロスの方のピアスに触れながらシスターが楽しそうに訪ねてくる。俺は両耳にピアスを開けているが、チャームがついているのは右耳だけだった。チェーンに揺れたクロスを満足げに見上げたシスターは可愛らしく微笑んだ。
「僕の兄さんとお揃いみたい」
「……お揃い?」
シスターはそう言うと、楽しそうに駆け出して先に教会に戻ると言って行ってしまった。
「いやー、気が利く弟を持つと楽できていいわー」
「…弟?」
「うん。あれ、うちの末弟のトド松。シスターの恰好は、単に村の人達が薦めたからやってるだけ」
「「……………………」」
そうか、村人のリクエストに応えてるだけなのか。優しいシスター?だな……
よし、何も気にしないことにしよう。
俺達は、そのままおそ松と共に彼らの教会へと向かうのだった。