それでも君が好きだから
□はじめまして、カラ松です
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釣り堀の人達は基本静かだ。考え事をしたいときにはちょうどいい。
「あと、一松兄さんで何かあったとき、つらい時にだけ来るよね」
「?!」
勝ち誇ったように言われて思わず末弟を見つめてしまった。気づいていたのか。いつからだろうか。
「他の兄さんたちは知らないけど、僕には判るよ。だって、末っ子だからね。一番兄さんたちを見てる」
「トド松…」
「話して楽になるならいつでも聞くよ?」
「…ん。ありがとう」
優しく微笑む弟にキュンとしながらも顔には出さずに彼の頭を撫でた。そして携帯の取って時間を確認する。うん、スタジオの時間だ。
「じゃ、後でな」
「は〜い」
ヒラヒラと手を振るトド松に小さく振り返しながら私は釣り堀を後にした。
私は、松野カラ松。松野家次男。六子の二番目。そんな彼に転生した私のせいなのか、私の知っている『おそ松さん』とは若干異なる。まず第一に、皆私に優しい。あと、私、何故かモテる。六子たちも……実はさり気にイケメンだ。F6とまではいかないけれど普通にしていれば普通にモテる筈だ。普通にしないからみんな彼女いない歴=年齢なんだと言ってやりたい。そう思っていた。先月までは。そう、先月唐突に末弟のトド松から爆弾発言をされたのだ。
『僕、十四松兄さんと付き合ってるんだ』
まさに寝耳に水だ。マジかいって感じだ。他の兄弟は騒いでいたが一松の「別に良いんじゃない?二人が弟なのは変わらないし」の一言で何故かみんな受け入れてしまったのだ。いや、私はね、もともと腐っていたので問題ないです。寧ろ大歓迎です。ありがとう、保養提供ありがとう。内心での言葉は奥底に隠して私も笑顔で受け入れてあげた。そこで思ったのは私のせいで原作とは違う方向に流れてしまったのではないかということだ。
それを証拠に、おそ松兄さんはチョロ松にセクハラ発言をよくしている。この前なんか銭湯で意味の判らない下ネタクイズをして、下ネタを言わして遊んでいた。私の腐ったレーダーがフラグをちゃんとキャッチした。速度松の組み合わせを。いいぞもっとやれ。ちなみに私はそのクイズに参加していない。え、なんでって……だって恥ずかしいよ。下ネタ、聞く分には良いけど言えないんだよ。
なんてことを悶々と考えているとスタジオに着いた。此処は家から少し離れているので兄弟たちにバレルことはないだろう。
「さて、練習しますか」
私は前世の頃にもやっていた『歌い手』をここでもやっている。名前は『ソラ』で。時々LIVEもするくらいには名は知られている。今日はスタジオで練習だ。ちなみに兄弟には言ってない。何故なら私は両声類で活動しているし、LIVEの時はここぞとばかりにスカートやドレスを着ている。私は元は女ですからスカート着たいんです!
話を戻して、練習だ。体幹を鍛えて発声練習をして鍵盤を弾いてギターを思いっきり弾いて歌う。ある意味私のストレス発散方法だ。ひとしきり練習したら時間はあっと言う間に過ぎてしまう。