それでも君が好きだから


□紅緋の心 深紅の心
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 それを判ってるから、此奴は一定の距離を保って良い兄貴でいたんだ。それに比べて俺は、どうだろう。

 チョロ松の心に漬け込んで、無理やり関係をつくったただのクズだ。

 そう。俺とチョロ松は体の関係だ。一回じゃない。学生の頃は頻繁に繋がっていた。


 チョロ松が、壊れない様に。俺が、壊れない様に。

 最後に抱いたのはいつだったかは、もう忘れた。抱かなくなったきっかけも忘れた。いや、思い出さない様にしていた。でないと、俺はこの狂った熱をどこに吐き出していいかわからなくなる。

 好きだって言える奴は良いよな。俺はもう、言う資格すらねぇよ。


 ……もう、言えねぇよ。



「―――カラ松、夕飯買いに行くんでしょ」
「あぁ、すぐ行く。先に外で待っててくれ」

 いつの間にか俺の後ろに立っていた一松に一瞬驚いたけど、俺は訝し気にカラ松を睨んだ。カラ松は軽そうにチョロ松を横抱きに抱き上げると俺の前で立ち止まった。

「てなわけで、後はよろしく」
「…はぁ?」
「俺は買い物があるし、それに……一松が怖い」

 フイッと視線を逸らしたカラ松の笑顔が固まる。確かに付き合う前からアイツの独占欲は半端なかった。付き合ってからそれは束縛心へと進化してる。たぶん、帰ってきて一番初めに見た光景が二人が抱き合ってる状態だったから一松の内心はものすごいことになっていそうだ。
 その一松の怒りを早く沈めないと、たぶんチョロ松が吊るされる気がする。そう判断した俺はチョロ松を受け取った。そういえば、これって所謂お姫様抱っこだ。と、いうか……普通に重いんだが、どうして此奴は軽々と持てたんだ。相変わらず怪力だな…

「…じゃ、ごゆっくり。俺達は、ゆっくり帰ってくるので」
「おい!!」
「ちゃんと、話せよ」

 ヒラヒラと手を振って去っていくカラ松に悪態をつこうとしたけど、腕の中のチョロ松が身じろいだので思わず口を閉じてじっと見た。起きる気配はなかったけど、その間にカラ松はいなくなっていた。

 俺に、どうしろっていうんだよ。

 失恋で、傷ついてる此奴を…


 どうしたら、いいんだ。



 言うのか?今更?好きだって?


 
 
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