ごった煮


□誕生日だからって以下略! 4
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「――いただきます」
「…いただきます」

 礼儀正しく、正座をして背を正してソラはいつもご飯を食べる。大口を開けたりはしない。丁寧に、洗練された和食のマナーの鑑の様に。クソ松は逆で胡坐をかいて食べる。同じ人間の筈なのに、環境が少し違うだけでこうも違うのかな。なんて、思って二人を見比べる回数が最近は増えた。
 暫くして、素麺を食べ終わった。僕が「ご馳走様でした」と言えば、丁寧にお辞儀をされた。それが不思議でつい、僕は質問した。

「どうしてお辞儀?」
「――…あぁ、これは……イチにした訳じゃないんだ」

 食べ終わった食器を重ねながらソラは、また寂しそうに微笑んだ。じっと僕が見つめると、困ったように頬を掻きながら重ねた食器を持ってキッチンへと向かって行った。
 ソラがキッチンへ消えたタイミングで、もう一人のおそ松兄さんともう一人の僕が帰ってきた。手を洗ってから居間に入ってきた二人は全身で疲労の色を出していた。

「疲れたー、あー、疲れたー」
「…しんどい」
「二人ともお疲れ。アイスティー、淹れたぞ。おそ松はレモンで、一松はミルク」

 二人はソラが持ってきたグラスに飛びつくように受け取った。そして一気にそれを飲み干すとその場にへたり込んでしまう。それを見ていたソラはクスクスと笑いながらグラスを片づけていった。結局、僕の疑問は解決されてはいなかった。

「――カラ松、お腹空いた」
「俺もー!!」
「もう少し早く帰ってくれば冷やしそうめんだったんだがな…一松、何食べたい?」
「ちょっと!?聞くのは一松だけかよ?!」
「冷やしそうめんかぁ…食べたかったな」
「もう一回作るか?」
「おい!!兄ちゃん無視するな!!」
「…んー……寧ろパスタ食べたいかも」
「判った。それじゃあ…カッペリーニにしよう」

 そう宣言したソラは再びキッチンへと消えていく。そして、その後ろをもう一人の僕は当たり前の様についていった。そして二人で並んで料理をし始める。僕は、その光景に目を丸くして固まった。本当に、彼奴の手伝いをしている。

「――中学の文化祭の時に、一松と十四松のクラスが『アニマル喫茶』したんだけど」
「…?」

 二人がキッチンに立つ光景は、もう一人のおそ松兄さんには日常風景らしくて僕を見ながら欠伸をして卓袱台に頬杖をついた。

「一松は調理班になってねー。その日からカラ松から料理を習い始めて、いつの間にか二人がキッチンに立つのは当たり前になったんだよね」

 
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