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そんな場所。


 
◆とある人の独白 

子供を、死なせてしまった。
産まれてくる筈だった小さな命。流れてしまった、私と彼の宝物。
薬の副作用で、私は…もう二度と子を成すことは出来なくなっていた。

当主の妻なのに、跡継ぎを成せないなんて…


絶望が、胸を支配した。


「…それで、これ?」

目が覚めた病室で、私は誰とも面会しなかった。すべて断って、彼さえも遠ざけた。

看護師に頼んで、離婚届を取ってきてもらって…一週間後、彼にそれを渡してもらった。彼は、それを握り締めて『面会謝絶』を無視して扉を殴るように開き大股で私が寝るベッドに近寄った。彼が右手を上げると、ひとりでに扉は締まり、施錠する音が聞こえた。

「…クオン、何考えてんの」
「なにって…カナタ、私は子供が出来ないの…跡継ぎを成せない伴侶なんて一族には不要よ」
「だからって、これ?ふざけてんの?俺が、お前に何て言ってプロポーズしたか忘れた?」

いつもほだらかな笑みを湛えているカナタから表情は無くて、淡々と確認するように質問をされる。

「…『一族とか、許嫁とか関係なしで──…俺はクオンと結婚したい』…そう言ったじゃん」
「でも、カナ…私は──…」
「俺は、初めてあったときからクオンが好きなんだ!!許嫁って判った時、死ぬほど嬉しかった!!俺は、当主とか関係無しに、俺個人でクオンに死ぬほど惚れてんの!!…クオンは、違うのかよ」

両膝をついて、私の手を握り締めて乞う様に額を重ねるカナタ。

「…行くなよ…ソナタまでいなくなって、クオンまでいなくなったら…寂しくて心臓がキュッてなっちゃうだろ」
「…カナ」
「護るから、俺が。文句なんて言わせない。だからお願い…傍にいて」

歴代の当主の中で『最強』と言われている彼は、何よりも孤独を恐れていた。ホントは繊細で儚いのに…それを知るのは私と彼の異母弟だけ。

護りたいと思ったから、私は彼と結婚したんだ。

それを思い出した私は、彼の手から離婚届を取り破り捨てた。

二人して涙でぐしゃぐしゃの顔でもう一度改めて誓いのキスをした。




それから三年後、私達の元に少女がやって来た。姪に当たる、名前は氷空。真面目で努力家で優しくて、可愛い子。カナはこの子を養子にして、次期当主として育てていくと言った。そうしないと、彼女が危ないと。
ソラの力は霊能力ではなく『神通力』だった。この子は、きっと前世が神か、それに近い存在だったに違いない。私は、カナが言った『危ない』の意味を理解した。この子は、脆い。脆すぎる。幼い頃のカナ以上に、脆かった。


私は、ソラを可愛がった。産まれてくる筈だった我が子を重ねていたのかもしれない。それでも、実の子のように接した。

そして、あの事故が起きた。


私は、転生を拒否した。霊体となり、常にソラを見守った。必要なら、手を貸した。
私は彼女の巫女としての師だ。簡単に自分の正体を勘づかせないし明かさせない。

これからも、ずっと。傍で見守らせて欲しい…



結果、塵に消え無に消えても構わない。



だから…


「お姉さん、ずっとこのアパートにいるの?」
《えぇ。いるわよ》
「…んー、俺、この部屋借りたいんだけど」
《いや》
「んー…棲む訳じゃないんだ。何て言うか、金庫的な倉庫的?に使用したいんだ。俺が契約したら、もう他のやつは来なくなるし、貴女も無駄な労力を使わなくていいと思うんだけど」


転生し、姿形が変わっても…性別が変わっても、世界がちがくても


私は貴女を護るから。


「利害が一致してると思わないか?」
《…そうねぇ…いいわ。貴方の笑顔、気に入ったし》


ねぇ、ソラ?母様に、貴女を護らせてね。


私が、消えてなくなるまで



 

2016/10/29(Sat) 17:46

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