火拳と私と。
□006 遅刻
1ページ/3ページ
____優美。
ぼんやりする意識の中、優美は誰かが自分を呼ぶ声を聞いた。
「誰……エース?」
____…ろ。お…優美。
「何…?」
____起きろ!!
突然の大声に、優美は慌てて飛び起きた。
目の前には制服を着たエース。時計を見ると、8:15。
「はっ!?」
「やっと起きたか…遅刻すんぞ。」
登校時間は8:30。
家から学校まで徒歩15分。
一瞬で状況を理解した優美は、エースを部屋から追い出して着替えを済ませ、下に降りて洗顔と歯磨きを同時に行うという高度なテクニックを披露した。
「すげェなお前。何かしらのギネス載るぞ。」
「ゼェ…ゼェ…今何分。」
「20分だ。」
自転車で行けば間に合うと考えた優美だったが、運悪くタイヤがパンクしたまま放置していたことを思い出した。
「エースの自転車は!?」
「あー、この間ルフィに貸したら壊された。」
「バカ…。」
「いいから走るぞ!」
エースに手を引かれ走り出した優美だったが、ここでもう一つ問題があった。
エースは学校内でもトップクラスの運動神経の持ち主。
一方の優美は、足は遅くはないものの、体力に関しては皆無だった。
「待っ…早…ちょっ、休憩…。」
「はっ?まだ家出て一分も経ってねェぞ!」
そんな調子で学校に到着したのは、8:35。
「歩くのと変わんないじゃん…。」
「お前の休憩が多すぎんだよ。」