短編集
□コンプレックス
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白ひげ海賊団の末っ子、リム。
彼女は生まれてすぐに母を亡くし、二人の兄と共に父に男手一つで育てられた。
男に囲まれた環境のためか、リム自身もたくましく、勇敢な少女に育った。
成長し、海賊となった彼女は、12番隊の一人としてその強さを知らしめていった。
そんな彼女は今、ある悩みを抱えている。
「リムー、聞いてる?」
彼女の隊の隊長であるハルタに名前を呼ばれても気付かず、その視線はある一点に向けられている。
「…どんだけ見てんの、サッチのこと。」
「うわぁっ! なんだ、ハルタ隊長か……。」
「なんだってなんだよ。」
そう、彼女が見ていたのは、4番隊隊長のサッチ。
誰に対しても優しく、明るい性格の彼を、いつしか目で追うようになっていたのだ。
「もうさ、いっそのこと告白したら?」
「何を言って……私なんかが告白して叶うような相手じゃないですから。」
もっと女の子らしくて可愛い子がお似合いです……、と呟くリム。
彼女は、自分の容姿に自信がないのだ。
背は高く筋肉質で、胸も無い。
端正な顔をしているが、化粧などはせず、胸のあたりまである髪も一つに束ねている。
遠くでクルーと話しながら笑っているサッチを見つめ、リムはため息をついた。
「…でもさ、その髪も、サッチのために伸ばしたんでしょ?」
「う……。」
前にサッチが好みの女性のタイプを話していたとき、ロングヘアが好きだと言っているのをリムは聞いたのだ。
ずっと短かった髪も、それ以来切るのに抵抗が生まれ、ここまで伸びたのだった。
「…いいんです。今は遠くから見てるだけで。サッチ隊長は私のこと、ただの妹としか思ってませんから。」
淋しそうに笑うリムの横顔を見つめ、ハルタもまた淋しそうな表情を浮かべた。
「…よし、リム。ちょっと着いてきて!」
突然立ち上がり、リムの手を取り歩き出したハルタ。
リムは黙ってハルタに着いていった。