短編集
□Happy Valentine...
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今日は、世の恋する女の子達が一年で一番気合いを入れる日。そう、バレンタイン。
一繋高校に通うこの少女、リムも例外ではない。
「もー、いい加減覚悟決めなさい!」
「だって……」
彼女が手に持つチョコレート。それを渡したい相手は、同じクラスのサボだ。
友達のナミに背中を押されながらも、放課後になった今でもまだ渡せないでいる。
「サボくーん! はいっ、これ!」
「おっ、さんきゅ。」
「サボ君! 良かったら私のも食べて!」
「ありがとな。」
サボはモテる。とにかくモテる。
そのルックスと、優しい紳士的な性格に女子はメロメロなのだ。
「ほらー、どんどん先越されていくわよ。そのうち告白するやつまで出てくるわきっと。」
「ナミ、ついてきて……」
「仕方ないわねー、じゃあさっさと行くわよ!」
「ちょ、ちょっと待って! やっぱ無理……」
ため息をつくナミ。するとそこへ、サボの親友であるエースがやってきた。
「何やってんだお前ら?」
「エース……って、何その量!」
「あぁ、ありがてェけど……全部食えっかな。チョコばっかりだろこれ。」
内蔵全部チョコになりそう…と苦い顔をして呟くエースは大きな袋を三つ抱えていた。中身はもちろん全てチョコ。
サボに負けず劣らず、この男もモテまくっているらしい。
「…そう、だよね。いっぱい貰っても困るよね。」
「え?」
「バカエース、今から渡そうとしてる人の前でそれ言う?」
エースの言葉により、余計に自信をなくすリム。
私なんかが渡したところで、サボ君の胃の負担を重くしてしまうだけなのではないか。
もしくは帰って捨てられてしまうのではないか。
そんな考えが頭の中をグルグル駆けめぐっていた。