Bluebird
□001 Where is this?
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その日華乃は、いつも通り眠りについた。お気に入りの部屋着を着て、スマートフォンを充電器に差し、愛用の抱き枕を横に、いつも通り、自室のベッドに入った。
はずだった。
「……あれ?」
珍しく夜中に目が覚め、時間を確認しようとスマートフォンに手を伸ばした。が、そこにあるはずの物は無く、手は空を切る。
寝ぼけていた頭が徐々にはっきりし、華乃は少しずつ違和感に気付きだした。
抱き枕は?布団の匂いこんなんだっけ?ってか、なんか揺れてる?
ゆっくりと上半身だけを起こし、部屋をぐるっと見渡した。
「……っ!」
思わず叫びそうになった声をなんとか抑える。
見覚えのないその部屋にある見覚えのないソファに、見覚えのない男が一人、寝ていた。
上手く回らない頭を必死にフル回転させ、華乃は今置かれている状況を整理した。
知らない部屋。知らない男。寝たときのままの姿。
……誘拐?
その二文字が頭に浮かび、華乃の背中には嫌な汗が流れた。
いや、でも縛られてる訳でもないし。
自分はソファで私をベッドに寝かせてくれるって、どんな優しさだよ。
あれか、マイルドヤンキーならぬマイルド誘拐的なやつか。
いや、なんだよそれ。我ながら意味わかんねーよ。
「……っ!!」
人間、本気で驚くと声が出ないんだな。と考えながら、華乃は突然目を開けたその男としばらく見つめ合った。
「目、覚めたのかよい。」
「え……あ、あの…、」
すると男はソファから立ち上がり、身構える華乃をよそに、「電気つけるよい。」と一声かけてから、部屋の明かりを付けた。
よい。という口癖がある人物を、華乃は一人しか知らなかった。しかし、それはこの世に存在するはずのない人。
眩しさに慣れた目で、華乃は改めて目の前にいる男の姿を確認した。
特徴的な頭。眠たそうな目。がっしりと締まった体。胸には大きなタトゥー。
華乃の頭の中で、ある答えに行き着いた。
自分の前にいるこの男は、ONEPIECEに出てくる不死鳥マルコのコスプレをした誘拐犯。
どこかで私のマルコ好きを知ったこの男は、そのマルコのコスプレで私を油断させようとしているんだ。
生憎、私はそんなにバカじゃないぞ。二次元と三次元の区別くらいつくわ。
一人で悶々と考えている華乃に、男は声をかける。
「お前は何者だよい。どうやって船に乗り込んだ。」
「あなたが連れてきたんじゃ…?」
っていうか船!?
どおりで揺れてると思った…。
私、どこに連れて行かれるんだろう。海外で売り飛ばされたりしないよね……?
「俺にそんな趣味はねェよい。お前が勝手に俺のベッドで寝てたんだろ。」
「えっ、私が?」
「もう一度聞くよい。お前は何者だ。どうやってここに来た。」
男に睨まれたままそう聞かれ、華乃は恐る恐る答えた。
「私は、華乃です……ここにいる理由は…わかりません。」
私、今、パニックです。