Bluebird
□002 歓迎の宴
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朝になり、目を覚ました華乃。視界に広がる見慣れない天井に、夜の出来事が夢でなかったことを知る。
白ひげの部屋からマルコの部屋に戻ってきた華乃は、自分はソファで寝ると主張したもののあっさりマルコに却下され、再びベッドを借りて眠ることになった。
そしてソファに寝ていたはずのマルコは今、見当たらない。
とりあえず華乃は、部屋に備え付けられてある洗面所を借りることにした。
水で顔を軽く洗い、これからどうしようかと、部屋で一人たたずんでいたとき、バン!と音を立てて突然部屋の扉が開いた。
「俺の新しい妹はどこだ!?」
そう言って部屋に入ってきたのは、コックの服にスカーフを巻いた、リーゼントの男。
「サッチ、さん……?」
華乃が尋ねると、サッチはパァッと顔を輝かせて華乃を見た。
「君が華乃ちゃんか! 俺のことを知ってくれてるなんて……サッチ感激!」
そう言って華乃に抱きつこうとしたサッチは次の瞬間、グエッと変な声を出して倒れた。
サッチの後ろから現れたのはマルコ。
「華乃を困らせるなよい。ごめんな、華乃。こいつにお前の話をしたら会いたいってうるさくてよい。」
「このやろマルコ、蹴ることねェだろ!」
マルコに軽く文句をぶつけたサッチは、再び華乃の方へ振り返った。
「あぁ…このむさ苦しい船に一輪の花が咲いた……。」
「悪かったな、むさ苦しくて。」
華乃が二人の勢いに押されている中、マルコはサッチに向かって、「お前は早く朝食の準備に行けよい。」と軽く睨みながら言った。
それは他の四番隊のやつらに…と言いかけたサッチにマルコはすかさず、「お前は隊長だろうがよい!」と怒鳴り、部屋から蹴り出した。
「ったくアイツは……。」
一度ため息をついたマルコは、華乃に向かって口を開く。
「なぁ華乃。一つ聞いて良いか?」
「はい?」
「さっき、サッチの名前呼んでただろ?あとオヤジのことも白ひげだと分かっていた。異世界から来たお前が、どうして俺達を知ってるんだよい。」
マルコからの鋭い質問に、華乃は正直に答えるべきか迷った。しかし、彼に嘘をついてもおそらく無駄であろうと考え、説明することに決めた。
「……つまり、華乃のいた世界では、この世界は空想上のものだというとかよい?」
「そういうことになりますね……。」
俯いて何か考えている様子のマルコだったが、「今は信じるしかないな。」と、どうにか納得してくれたようだ。
そして華乃に、一緒に食堂へ来るように告げた。
「ここの料理は旨いよい。サッチも普段はあんなんだが、料理の腕は間違いねェんだ。」
「そうなんですか、楽しみです!」
華乃が笑顔で返すと、マルコは華乃の方を見て言った。
「クルーも、顔は厳ついかもしれねェが気の良い奴らばかりだよい。華乃も早く慣れて、敬語も取れよい。」
優しく微笑んで言うマルコに、華乃は思わず胸を高鳴らせた。
初めての笑顔…。なんという破壊力。
華乃は表情を緩ませながら、マルコの後に着いて食堂へと向かった。