Bluebird
□003 目標
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華乃は翌朝、甲板に転がった酒樽達の片付けに勤しんでいた。
しばらくすると、船内からマルコが欠伸をしながら出てきた。
「おはよう華乃……お前、ずっと片付けてくれてたのかよい。悪ィな。」
「おはよう。ううん、このくらいいつでもやるよ。」
「ハァ……それに比べて情けねェ野郎どもだよい。」
マルコの視線の先には、二日酔いに苦しむクルー達の姿が。
「頭痛ェ……。」
「おえぇぇぇ……」
「…マルコは大丈夫なの?」
「俺は二日酔いなんてしねェよい。」
むしろ誰よりも飲んでおいてこの調子のマルコが異常なんだと、華乃は確信したが口には出さずにいた。
すると、華乃に声をかける男がいた。
「お前が華乃か?」
華乃は、振り向いた先にいた男を見て、一瞬表情を堅くした。
「俺ァ、ティーチってんだ。よろしくな、華乃。」
「うん、よろしくね。」
「ゼハハハ! いつかゆっくり話せると良いな!」
そう言ってティーチはどこかへ去っていった。
その後ろ姿を見つめる華乃。マルコはそんな華乃を不思議に思い、どうしたんだよい、と声をかける。
「…ティーチって、どんな人なの?」
「あいつか? まァ…ちょっと変わった奴だよい。悪い奴じゃねェけどな。」
「そっか……ごめんね、ちょっと気になっただけ。」
ティーチとのこの会話以来、華乃は考えていた。
きっといつか、あの事件が起こる。
サッチを死なせたくない。でも、今の自分に何かを変えられる力なんて無い。
力が、欲しい。
華乃は一人、オヤジの部屋へ向かった。