短編集
□コンプレックス
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ハルタに連れられやってきたのは、ナース達のいる医務室。
二人が中へ入ると、美人ナース達が一斉に振り向いた。
「あら、リムとハルちゃんじゃない。どうしたの?」
「ハルちゃんって言うな!」
ハルタをそう呼んだのは、ナース隊隊長のレイ。その溢れ出る色気とは裏腹に、相手が誰であろうとハッキリものを言える性格だ。
「わかったわよ。んで、リムとハルちゃんが何の用?」
「わかってないだろ……。」
軽くハルタに睨まれながら笑うレイは、笑いながら言った。
「まぁ、なんとなくわかるけどね。サッチのことでしょ?」
「え、いや、私は隊長に着いてきただけで……。」
「そうだ、サッチのことだ。」
「え?」
ハルタの意図が読めないリムは、ポカンとしながらハルタを見る。
「明日、宴があるだろ? そのときに、リムをお前らの力でサッチ好みの女にしてほしいんだ。」
「ちょ、隊長何言って……。」
「あら、そんなことならお安いご用よ。いいわよね、みんな!」
レイが言うと、他のナース達は笑顔で頷く。
「私、この日がくるのを待ってたわ。」
「リムを変身させるのが夢だったのよ。」
「ふふっ、期待してなさいよリム。」
どんどん進められる話に、リムは口を挟めずにいた。
「あの、」
「さぁ、早速計画を立てるわよ! リムには楽しみにしててもらいたいから、出てもらえる?」
「……はい。」
気は決して弱くないリムだが、ナース達には絶対に適わないと自覚していた。
言われるがままに医務室を追い出されるリム。
リムが出たのを確認したレイは、ハルタに言った。
「…本当にいいの? 私達の手に掛かればサッチなんて一瞬で落ちちゃうわよ。」
「あぁ……リムには笑顔でいてほしいんだ。」
何を隠そう、ハルタはリムのことが好きなのだ。
しかし、その想いはナース達にはバレたものの誰にも明かさず、自分の中に留めていた。
「ハルちゃんがいいならいいんだけどね。」
「だからハルちゃんって言うな……。」