短編集

□Happy Valentine...
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「リム、誰かにチョコ渡すのか?」


「うん…うーん……やっぱりやめよっかな。」


「はぁ!? ここまできて何言ってんのよ!」




リムの脳内には、余るほどのチョコを食べて内蔵がチョコになったサボの光景しか浮かばなかった。


そんなの嫌……。




「あんたサボのために頑張って作ったんでしょ?」


「うん……。」


「サボに渡すのか!」


「普段料理なんてしないくせに、サボのためにレシピ本なんかも買ったんでしょ?」


「うん……。」


「おいサボー!」


「だったら渡さないと! 結果はどうであれ、自分の気持ちを伝えることに意味があると思うわよ?」


「そっか……。」


「呼んだか? エース。」


「おう! リムがお前に用だってよ!」




エースの声が、ようやくリムの耳に入ってきた。

それと同時に、リムが? というサボの声。


自分の真横にサボが立っていると気づいた途端、リムは固まった。




「どうした、リム。」


「えっ……あ、その…」




空気を読んだナミは、エースを連れて二人から離れた。


しどろもどろになりながらも、震えた手でチョコが入った箱を差し出すリム。




「これ……もし良かったら、受け取ってくれない…かな?」


「え……俺に? まじ?」




驚いた様子のサボ。


そうだよね、私なんかがサボ君にあげるなんてお門違いも甚だしいよね。

あぁ神様、今すぐ私を溶かしてください。チョコレートのように。この場から消し去ってください……。




「…すげェ嬉しい。ありがと。」


「えっ…?」


「まさかリムから貰えると思ってなかった……うわ、どうしよ俺。」




口を押さえて赤面するサボ。それを見たリムは、思わずつられて赤面した。




「あ、じゃあ……貰ってくれてありがとう。またね、サボ君。」




サボの顔を見られず、ナミの元へ行こうとするリム。

その腕を、サボが掴んで止めた。
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