のこノート

□ひとりぼっちのピラニアくん
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けもの、とり、さかな、むし‥‥
せかいじゅうからあつまった、いろいろないきものたちが、いっしょにくらしているまちがありました。
まちのまんなかには、おおきなかわがながれていて、まちができたばかりのころは、このかわにすむみずのなかのいきものたちしかいませんでした。
そのなかでも、するどいきばをもつさかなのピラニアくんは、とてもまじめで、ぼくはみんなのリーダーとしてまちをまもるんだ!といつもいっていました。
やがてまちはおおきくなり、もりやさばくやそらのいきものたちも、たくさんあつまってきました。
「このまちも、ずいぶんさわがしくなってきたなあ。みんながねているあいだに、ぼくがみまわりをしよう」
まちのへいわをまもるため、ひとりでかけるピラニアくん。
「おやっ、あのおとはなんだろう。ぶきみだなあ…」
こかげのくらやみのなかから、ふしぎなねいろがきこえます。
かわらにうえられたきのしたへピラニアくんがいってみると、きのうえにいちわのとりがいました。
「ちょっと、ふくろうのおじいさん。こんなよなかになにをしているんだい?」
ピラニアくんはふくろうじいさんにたずねました。
「こんばんは、ピラニアくん。わしは、とてもさむいきたのゆきぐにからやってきたのじゃ」
としをとったふくろうさんは、きびしいふゆをいきのびるために、あたたかいばしょをさがしていて、ようやくこのまちにたどりついたといいます。
「ここはとてもあたたかい。うれしいなあ」
ふくろうじいさんはうれしくて、うたをうたいます。
「こまるよ、おじいさん。よなかにうたをうたったら、みんながめいわくするんだ。いますぐうたをやめてくれないか」
まちのへいわをまもるため、ピラニアくんはきびしくいいました。
「しかし、わしらふくろうはやこうせいなのじゃ。ひるまはねているから、よるしかうたえない」
ふくろうじいさんは、こまったかおでいいました。
「まちのルールなんだ。きみたちがここへくるまえからきまっていたんだよ。ルールをまもれないならでていってくれるかい」
くちをおおきくあけていいはなつピラニアくん。するどいきばがギラリとひかり、いまにもかみつきそうです。
「わかったよ。しかたがない‥‥わしがでていこう」
ふくろうじいさんはさびしそうに、とおくへとんでいってしまいました。
よるのみまわりをつづけるピラニアくん。
「うわっ、なんだこれ!?」
どてにあながあいていて、ピラニアくんはあやうくあなにはまってしまうところでした。
「あれっ、ピラニアくんじゃないか。だいじょうぶ?」
あなのなかから、もぐらがかおをだしていいました。
「だいじょうぶじゃないよ。そのあなはきみがほったのかい?」
ピラニアくんがたずねると、
「そうだよ。ぼくたちもぐらは、じめんにあなをほって、つちのなかでくらすんだ」
もぐらくんはとくいげにいいました。
よくみると、まわりにももぐらのなかまたちがほったあながたくさんあいています。
「こまるよ。じめんにあなをほったらあぶないだろう。みんながめいわくするから、あなをぜんぶふさいでくれないか」
まちのへいわをまもるため、ピラニアくんはきびしくいいました。
「そんなことをいわれても、もぐらはあなをほらないといきていけないんだよ。それでもやめろっていうのかい?」
こまったかおでたずねるもぐらくん。
「まちのルールなんだ。きみたちがここへくるまえからきまっていたんだよ。じめんをこんなにあなだらけにして、きみたちはまちをあらしているのとおなじだよ。ルールをまもれないなら、でていってもらうしかない」
くちをおおきくあけていいはなつピラニアくん。するどいきばがギラリとひかって、いまにもかみつきそう。
「そんなにこわいかおをしないで。わかったよ。しかたがない‥‥ぼくたちはでていくよ」
ピラニアくんをおこらせたら、かじられてしまうかもしれない。もぐらたちはおおあわてでひっこしをはじめると、よあけまえにはひとりもいなくなりました。

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