のこノート

□ひとりぼっちのピラニアくん
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「きょうもぼくのまちはへいわだ。ルールをやぶるやつはいないかな?」
つぎのひもピラニアくんは、まちのみまわりをつづけました。
「うわっ、あぶない!どうしてこんなものが…」
ふるいきでできたテーブルがあって、ピラニアくんはぶつかってしまいました。
「よいしょ、よいしょ…あらっ、ピラニアくん。だいじょうぶ?」
いっぴきのかめが、ピラニアくんがぶつかったのとおなじふるいきのテーブルを、いっしょうけんめいはこんでいました。ほかにもいくつかのテーブルがならんでいます。
「だいじょうぶじゃないよ。こんなものがたくさんおいてあったら、じゃまになるだろう。みんながめいわくするから、いますぐすててきてくれないか」
まちのへいわをまもるため、ピラニアくんはきびしくいいました。
「でも、これはまだつかえるのよ。ふるくても、みんなのおもいでがつまっているし。このテーブルにみんなであつまって、おちゃをのみながらたのしくおはなししたら、きっとすてきだわ」
かめさんはいいましたが、
「きみはりくがめだろう。あとからやってきたよそもののくせに、このまちのなにがわかるっていうんだい。こんなふるいものをひっぱりだしてきたらじゃまなだけだ。テーブルなんて、あたらしくつくればいいじゃないか」
くちをおおきくあけていいはなつピラニアくん。するどいきばがギラリとひかって、いまにもかみつきそう。
「どうしてあたらしくないといけないの? ふるい、ふるいといったって、つくられてからまだひとつきもたっていないのに」
かたいこうらでみをまもることができるかめさんは、ピラニアくんのするどいきばをおそれずに、いいかえしました。
「まちのルールなんだ。きみひとりがギャーギャーわめいたって、ぜったいにルールはかわらない。ルールをまもれないやつは、まちをあらしているのとおなじだよ。したがわないならでていってもらう」
ピラニアくんはきばをカチカチならして、かめさんをおいたてました。
「きゃっ、やめて。わかったわ。でていくから…」
けっきょく、かめさんもまちをさっていきました。
そうしてピラニアくんが、まいにちみまわりをつづけているうちに、まちにすんでいたいきものたちは、とうとうだれもいなくなりました。
「ぼくはまちのへいわをまもった。ただしいことをしたんだ」
ひとりのこされたピラニアくんは、ほこらしげにいいました。
「だけど、ずいぶんしずかになったなあ…ぼくはルールをまもっただけなのに、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。みんなにあいたいよ」
にぎやかで、たのしかったむかしのことをおもいだして、ピラニアくんはさびしくて、かなしくて、なみだをながしました。

ルールは、みんなのため。
だけど、みんなってだれのこと?
あなたのしっているルール、おかしなところはありませんか?
ピラニアくんといっしょに、かんがえてみて。

(おわり)
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