ヒカルの碁
□Next 第1章
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「倉田以下、ただいま戻りましたー」
バサバサと扇をあおぎながら、恰幅の良い倉田が棋士院にヒカルたちを従え、韓国から戻ってきた。
「おお、お疲れさまでした」
激闘を終えた棋士たちを出迎えようと、残っていた職員たちが出迎えに向かう。
対局結果は知っているものの、代表として健闘してきた棋士たちに惜しみない拍手が送られる。
そして今回1勝を収めたアキラは、すでにたくさんの職員に囲まれてしまっている。
端正な顔立ちも相まってか、女性職員はとろけそうな視線を送っていた。
「あーほんと、ガキのお守りは疲れるわ」
そんな中、悪態をつきながら倉田はずんずんと進んで行く。
暖簾に腕押しとはまさにこの事だ。
倉田は、途中仰いでいた扇子をビシッと音を立てて綴じ、ヒカルたちを指した。
「あ、お前ら飯食ったらこれから検討会やるからな。
1時間後に戻ってこい。
そのあと報告書提出」
「えー、もう夕方だし家に帰りたいー」
「アホ。
遠征はな、報告書を提出するまでが遠征だ。
プロ棋士はみんなやってんの」
「えー……?」
ちらりとヒカルがアキラを伺うも、さも当たり前の顔をしている。
今夜は帰りはかなり遅くなりそうだと、ヒカルはがっくりとうなだれた。
「そうだ、部屋空いてる?
空いてたらついでにお茶も持ってきて」
倉田の物言いは本当に遠慮がない。
少しだけ苦笑しながら、男性職員は倉田に奥の空いている部屋を指し示した。
「……ということだから藤城さん、悪いんだけどお願いできるかな?」
その声に、パソコンでデータ入力をしていた女性が顔を上げた。
「はい、ではご案内します」